[Vol.1837] 銅、原油、小麦など「武器化」の実績あり

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.68ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,748.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年01月限は18,170元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年12月限は543.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1704.35ドル(前日比4.65ドル拡大)、円建てで8,358円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月24日 16時30分時点 6番限)
13,417円/g
白金 5,059円/g
ゴム (まだ出来ず)
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,000円/mmBtu(24年12月限 10月15日17時54分時点)

●NY銅先物(期近) 月足  単位:ドル/ポンド
NY銅先物(期近) 月足  単位:ドル/ポンド
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「銅、原油、小麦など『武器化』の実績あり」
前回は、「世界分裂は『資源の武器利用』のきっかけ」として、分断・分裂がもたらすコモディティ(国際商品)マーケットへの影響を確認しました。

今回は、「銅、原油、小麦など『武器化』の実績あり」として、各種コモディティ(国際商品)生産国上位の自由民主主義指数(平均)を確認します。

世界分断・分裂の影響を、個別のコモディティ銘柄で確認します。以下の図は、世界の民主主義のピークアウトの起点となった2010年と2023年(農産物は2022年)における、主要なコモディティ銘柄の生産国上位10カ国(偏在性が高い銘柄は10に満たない場合がある。例えば、プラチナは5~6カ国で世界のほぼ100%を生産している)の自由民主主義指数の平均とその変化を示しています。

以前の「[Vol.1834] 世界の民主主義は2010年頃にピークアウト」で述べたとおり、同指数は0と1の間で決定し、0に接近すればするほど民主的な度合いが低いことを、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを意味します。このため、ここに示した主要銘柄はいずれも、自由度や民主度が比較的低い国(非西側諸国)で生産されていることが分かります。

なおかつ、ほとんどの銘柄において、2023年(農産物は2022年)の同指数が2010年よりも低下したことが分かります。金属、エネルギー、農産物という分野を横断したコモディティ全般において、「生産国の非民主化」が進行していると言えます。

生産国での非民主化は、民主主義を正義と捉え、かつそれらの品目を大量に消費する西側諸国との分断・分裂が目立ちつつあることを意味します。「[Vol.1836] 世界分裂は『資源の武器利用』のきっかけ」で述べた通り、分断・分裂は、生産国に「資源の武器利用」を促す強い動機になり得ます。

目下、「資源の武器利用」は、原油においてはOPECプラスの減産、小麦などの穀物においてがロシアの輸出制限などで起きています。

また、西側がESG(環境・社会・企業統治)の考え方に基づき、社会を脅かす国や企業と取引を控える動きを鮮明にし、制裁(おしおき)の名目で、2022年に戦争を勃発させて今もなおウクライナへの侵攻を続けているロシアで生産された金属を、世界の在庫に流入させない動きが進行しています。これによって、一部の金属銘柄において、需給ひっ迫に拍車がかかっています。

このように、武器利用による需給ひっ迫懸念だけでなく、西側自らが需給ひっ迫に拍車をかけていることで、各種主要銘柄は、2010年ごろ以降、目立った上昇トレンドを描く、あるいは長期視点で水準を切り上げ、切り上げた水準を維持する動きを鮮明にしています。

図:各種コモディティ(国際商品)生産国上位の自由民主主義指数(平均)
図:各種コモディティ(国際商品)生産国上位の自由民主主義指数(平均)
出所:V-Dem研究所。Energy Institute、USGA、FAOのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。