ペルシャ湾情勢を予見するための指標とは!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。56.92ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,471.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は12,595元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年01月限は452.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで553.8ドル(前日比0.4ドル縮小)、円建てで1,931円(前日比3円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(11月21日 16時55分頃 先限)
 5,127円/g 白金 3,196円/g 原油 38,600円/kl
ゴム 187.8円/kg とうもろこし 22,940円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「ペルシャ湾情勢を予見するための指標とは!?」

今回は「ペルシャ湾情勢を予見するための指標とは!?」として、米国のペルシャ湾岸諸国からの原油輸入量とそのシェアについて書きます。

EIAの月次統計には、米国の原油輸入量のデータに、“Persian Gulf Countries(ペルシャ湾岸諸国)”という項目があります。

最も古いデータは1993年1月で、イラク、クウェート、サウジ、UAE、カタールからの輸入量の合計とみられます。オマーンはオマーン湾に面する国と認識されていとみられ、含まれません。

イランとバーレーンは、1993年1月以降、輸入実績がないため統計に入るか不明ですが、仮に、米国が両国から原油を輸入すれば、ペルシャ湾岸諸国からの原油輸入に加わるとみられます。

以下のグラフの通り、米国のペルシャ湾岸諸国からの原油輸入量は減少傾向にあります。実際のところ2003年ごろ以降は、ほぼ、イラクとクウェート、サウジ3カ国からの輸入です。

その量は、2019年8月時点で日量71万2000バレルで、全原油輸入量の10.3%にあたります。

2018年9月、同輸入量は日量151万8000バレルで、全原油輸入量の20.0%だったことを考えれば、このおよそ1年間で急速に、米国はペルシャ湾岸諸国からの原油輸入を減らしたことがわかります。

米国は、中東情勢の緊迫化がホルムズ海峡を経由して輸出される原油の動向を不安定化させることを考慮し、ペルシャ湾岸諸国からの輸入を減少させてきたとみられます。

昨年秋ごろからこのような動きが鮮明になっていたことを考えれば、米国は、ペルシャ湾の情勢が混乱することを予見し、(今年5月・6月にタンカーへの妨害行為が起きる以前から)すでに、ペルシャ湾岸諸国からの原油輸入量を意図して減らしていた可能性があります。

米国のペルシャ湾岸諸国からの原油輸入量は、中東情勢が緊迫化することを示唆する指標といえるかもしれません。

図:米国のペルシャ湾岸諸国からの原油輸入量(左軸)と全原油輸入量に占めるシェア(右軸)


出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。