[Vol.2109] 協調減産継続で原油の長期高止まり続く

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。59.70ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,254.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年05月限は15,065元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年01月限は453.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2586.25ドル(前日比12.45ドル拡大)、円建てで13,721円(前日比31円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月5日 18時37分時点 6番限)
21,417円/g
白金 7,696円/g
ゴム 324.8円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「協調減産継続で原油の長期高止まり続く」
前回は、「サウジの『ダブルフェイス』は限界か?」として、自主減産実施八カ国の自主減産における減産順守率(2023年5月から2025年10月)を、確認しました。

今回は、「協調減産継続で原油の長期高止まり続く」として、2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景を、確認します。

以前の「[Vol.2107] 減産をしながら増産をするOPECプラス」で述べたとおり、自主減産の縮小という名前の増産は、その規模に限度があるため短期視点の下落要因であるといえます。また協調減産の継続については、少なくとも2026年の年末まで続く比較的長い時間軸の上昇要因であるといえます。

もし仮に、2026年6月7日に予定されている次回のOPEC・非OPEC閣僚会議において、2027年も協調減産を続けることを決定すれば、長い時間軸の上昇要因がさらに継続することを意味します。

現在、協力憲章の配下で減産を実施していないブラジルや、(可能性は低いかもしれないが)例外的に減産を行っていないイラン、リビア、ベネズエラといった国が協調減産に参加するようになれば、大きな規模の協調減産が長い時間軸で続くことになります。これは原油相場を比較的長い時間軸で支える大きな上昇圧力になり得ます。

なぜOPECプラスは減産を実施するのでしょうか。短期視点で原油相場を反発させるため、と報じられることがありますが、以前の「[Vol.2105] さらなる高値を望む主要産油国」で述べた通り、OPECプラスにとって原油の減産は「資源の武器利用」という意味があると考えられます。世界の分断が進んだり、「石油悪玉論」が横行したりしているからこそ、自分の身を守るために減産をしているという考え方です。

下の図の通り、世界の分断は世界の民主主義の後退、世界の民主主義の後退は、人類が良かれと思ってつくり出した新しい技術・考え方のマイナス面がきっかけによって発生していると考えられます。石油悪玉論もその流れの中で台頭し始めたと考えられます。

新しい技術や考え方のマイナス面が世の中からなくならない限り、世界分断の深化や石油悪玉論の横行はなくならないと考えられます。新しい技術や考え方は人類が良かれと思ってつくり出したものであるため、世の中からなくすことはほぼ不可能です。

新しい技術や考え方のマイナス面は今後も世の中に残るでしょう。その結果、世界の民主主義の後退や世界分断の深化が続き、加えて石油悪玉論も続くでしょう。そしてこれらは、これからもOPECプラスの原油の減産を行う動機となるでしょう。

その意味で筆者は、2026年6月7日に予定されている会合で、規模や実施する国はどうあれ、2027年の協調減産の継続が決定すると考えています。このことは長期視点で原油相場を支える大きな原動力になると考えます。

産油国が関わる戦争・紛争の動向、主要国の景気や株価指数の動向、米国の石油の需要・供給に影響を与えうるさまざまな政策の動向など、留意すべき材料は他にもありますが、こうした材料とともにOPECプラスの協調減産継続による上昇圧力が原油相場を押し上げ、例えばサウジアラビアが満足するであろう83ドルを大きく超える場面も、近い将来、見られる可能性があると考えています。

日本でガソリンの暫定税率の廃止が決定し、ガソリンの小売価格が大きく下がり始めました。しかしこれは、減税による値下がりであるため、今後の原油の国際相場やドル円相場の動向によっては、全国平均で再び1リットルあたり180円、190円、あるいは200円を超える可能性も否定はできません。

引き続き原油相場にとって大きなテーマの一つであるOPECプラスの動向に注目していく必要があります。

図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。