FOMCを受けた金(GOLD)見通し。

著者:菊川 弘之
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 米連邦準備理事会(FRB)は29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の現状維持を決定。短期金利の指標であるFF金利の誘導目標を、年1.50~1.75%で維持する。政策金利据え置きは、2019年12月から2会合連続。前回FOMC会合で、先行きの政策シナリオで、2020年中は、利下げも利上げも見送る方針を示している。パウエル議長記者会見では、「米景気は拡大が続き、金融政策は現状が適切だ」と主張した一方、新型肺炎の感染拡大には「世界景気への影響を注視する」と述べて警戒感を示したことで、米長期債利回りが大きく低下し、ドル売り・NY金買いの展開となった。また、FOMC声明で消費の伸びについて「力強いペース」から「穏やかなペース」に引き下げられ、金融緩和が長引くとの見方から、ダウ平均の上げ幅は一時180ドルを超えたが、新型肺炎の感染拡大への警戒感は続いており、ダウの戻りが売られたことも、NY金の買い要因となった。

 パウエルFRB議長は、「QE4ではない」と述べているが、2019年9月中旬のレポ市場危機以降、臨時の資金供給オペを実施、10月中旬以降に月600億ドルの短期国債の購入を開始した事が、NY株高の一因となっていた。いわゆる米国の「隠れQE」による資金供給だが、年明け後も供給は続き、FRBの資産は足元で4兆1千億ドル台と、再拡大前と比べ4千億ドル近く増えた。

 今回パウエルFRB議長は、現状の資産拡大も「第2四半期中には準備預金は十分な水準になるとみている」と説明。過剰な市場の期待をかわす様に、資産拡大はいつまでも右肩上がりで増えていくものではないとの考えを強調。銀行の超過準備に適用する付利(IOER)は1.60%に5bp引き上げた。パウエル議長は市場とのコミュニケーション能力を再度試される局面を迎える可能性。隠れQE終了思惑が高まると、株価下落・NY金の買い要因となるだろう。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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