新型肺炎拡大で中国の石油消費量はどの程度減少するのか?

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。53.66ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの低下などで。1,612.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年05月限は11,690元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年04月限は419.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで612.4ドル(前日比5.1ドル拡大)、円建てで2,202円(前日比17円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(2月20日 19時36分頃 先限)
 5,794円/g 白金 3,592円/g 原油 39,850円/kl
ゴム 188.1円/kg とうもろこし 24,380円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「新型肺炎拡大で中国の石油消費量はどの程度減少するのか?」

前回は「米シェール主要地区の原油生産量は増加が鈍化」として、2月18日にEIA(米エネルギー省)が公表した、米シェール主要地区における各種データから、同地区の原油生産量に注目しました。

今回は「新型肺炎拡大で中国の石油消費量はどの程度減少するのか?」として、EIAが毎月半ばに公表している短期見通し内の、中国の石油の消費量の見通しに注目します。

この場合の石油の消費量は、ガソリンや軽油、ジェット燃料、暖房油などの石油製品の消費量の合計を指します。

1月の短期見通し1月14日(火)に公表されましたが、この短期見通しの要約文には、コロナ(corona)やウィルス(virus)、肺炎(pneumonia)などの新型肺炎に関わる文言はほとんど確認できませんでした。

つまり、1月の見通しは新型肺炎の拡大による消費減少を見込んでいないことになります。

しかし、2月の短期見通しは、要約文の冒頭から“effects of the coronavirus”の文字がおどっており、新型肺炎の拡大が、各種データの見通しに大きな影響をもたらしたことがうかがえます。

以下のグラフのとおり、EIAは、中国の石油の消費量の見通しにおける下方修正のピークは2020年の3月で、その後、徐々に回復し、秋以降、1月の見通しとほとんど同じ水準に戻ることを見込んでいます。

見通しのモデルの一部に、2003年に中国で感染が拡大したサーズの例を用いているとの記載もあり、影響のピークは3月で、その後年内にはほぼ回復、という流れです。

世界全体に占める中国の石油の消費量はおよそ15%です。このため、この中国の石油消費量が大きく増減するとみられる第1四半期は、世界全体の石油消費量が減少する可能性があります。

次回以降、EIAが公表した、新型肺炎拡大を踏まえた、世界全体の石油消費量の見通しについて書きます。

図:EIAによる中国の石油消費量の見通し 単位:百万バレル/日量
EIAによる中国の石油消費量の見通し

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。