金相場、調整局面も下値は限定的か?

著者:菊川 弘之
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 NY金(12月限)は8月12日、ザラ場で心理的節目1900ドルを割り込み、6月5日安値~8月7日高値までの上昇に対する半値押しを達成。ただし、安値は買われて長い下ヒゲを形成し、終値ベースでは1900ドルを回復。18日には、2000ドル台を回復した。

 足元は、CFTC建玉報告でユーロの対ドルでの大口投機玉の買い越しが過去最高水準にまで膨れ上がった事に加えて、レーンECB専務理事が「ECBは為替レートを目標にしていないが、ユーロドルのレートは重要問題」とユーロ高牽制発言が伝わり、ユーロの調整に合わせて、相関の高い金相場もポジション調整継続となっている。

 ただ、ユーロドルは短期的な過熱感はあるものの、1999年のユーロ発足以来の概ね平均水準に戻っているだけで、ECBがユーロ安を誘導するのは困難か?

 まずは、10日のECB理事会が注目。声明やラガルド総裁の記者会見でユーロ高への懸念を表明するか否か、マクロ経済見通しでGDPやインフレ率を下方修正するか否か、追加緩和を決定するか否か、などが注目点だ。英国がEUとの交渉期限を10月15日と区切ったことで、欧州絡みでの材料で金が左右される可能性には注意したい。

 パウエルFRB議長がジャクソンホールの年次シンポジウムで、インフレ目標基準を緩和させる新たな指針を示し、FRBが将来の利上げに消極的な姿勢を示す中で、ドルの上値は限定的と見られる。

 米国では上院が8日、下院が14日に再開される。今週末に「追加の失業給付の財源枯渇」が懸念されていたが、民主党のペロシ下院議長とムニューシン財務長官は、9月末の政府機関閉鎖回避に向けたつなぎ予算の編成で非公式に合意したと報じられている。

 市場で噂されるトランプ大統領によるオクトーバー(10月)・サプライズとして、ワクチン認可や、スノーデン恩赦などがあるが、これらが実現するまでは、ドル円は狭いレンジ相場が継続か?
 

NY金(日足)

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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