プラチナ市場にある“正したい勘違い”①

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。40.81ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,922.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は12,900元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年11月限は264.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1034.5ドル(前日比3.4ドル拡大)、円建てで3,545円(前日比13円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月9日 20時20分頃 先限)
6,531円/g 白金 2,986円/g
ゴム 193.5円/kg とうもろこし 24,050円/t

●NYプラチナ先物 月足 (単位:ドル/トロイオンス)
NYプラチナ先物月足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ市場にある“正したい勘違い”①」

前回は「生き残った米シェール業者はどんどんと筋肉質になっている!?」として、先月、EIA(米エネルギー省)が公表した、シェール主要地区の新規1油井当たりの原油生産量に、注目しました。

今回はプラチナについて「プラチナ市場にある“正したい勘違い”①」として、先月、WPIC(World Platinum Investment Council)が公表したプラチナの需給に関するデータより、プラチナの鉱山生産量、および産業用と宝飾用を足した消費量の動向に、注目します。

同データより、プラチナは、およそ60%が産業用、25%が宝飾用に使われています(2019年)。また、産業用も宝飾用も、その増減は世界の景気の良し悪しに左右される傾向があると言われています。このため、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、プラチナ全体の消費が大きく減少する懸念が生じている、と言われています。

以下のグラフは、産業用の消費+宝飾用の消費(以下、主要消費)の推移と、供給の72%を占める鉱山生産量の推移です。(2019年時点)

新型コロナ拡大の影響を受けている2020年第1四半期から、主要消費も鉱山生産も、ともに大きく減少していることがわかります。

新型コロナ感染拡大前の2019年第4四半期と2020年第2四半期を比べると、主要消費が45万4,000オンス、減少したのに対し、鉱山生産は62万5,000オンス、減少しました。鉱山生産の減少量の方が大きいことがわかります。

“新型コロナ→消費減少懸念”というイメージを容易に描くことができる一方、実は供給の方が大きく減少しているわけです。鉱山生産は、新型コロナの感染拡大が始まってから減少が目立ち始めているため、鉱山生産も主要消費と同様、新型コロナの影響を受けているとみられます。

報道では、新型コロナの感染拡大によるロックダウン実施のため、世界最大のプラチナの鉱山生産国である南アフリカの生産量が大きく減少し、生産能力は年末にかけて回復するものの、本来の75~80%程度と想定される、とされており、新型コロナ起因のプラチナの供給減少はまだ続くと考えられます。

新型コロナは、現段階では、消費減少以上に、供給減少要因である点を意識する必要があります。つまり、プラチナ価格への影響で言えば、コロナは上昇要因とみられる、ということです。この点が、正したい勘違いの1点目です。

図:プラチナの主要な需要と供給の推移(四半期ごと) 単位:千オンス
プラチナの主要な需要と供給の推移(四半期ごと)

出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。