郵便による投票を追い風に、大逆転を演じたバイデン氏

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。38.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの低下などで。1,960.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年01月限は14,240元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年12月限は237.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1054.55ドル(前日比2.25ドル拡大)、円建てで3,529円(前日比0円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月9日 18時42分頃 先限)
6,537円/g 白金 3,008円/g
ゴム 214.8円/kg とうもろこし 24,410円/t

●NY金先物 日足 (単位:ドル/トロイオンス)
NY金先物日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「郵便による投票を追い風に、大逆転を演じたバイデン氏」

前回は「激戦2州、バイデン氏が郵便投票分で、トランプ氏にほぼ追いついたが…」として、日本時間11月6日(金)18時時点の、米大統領選挙の開票状況について書きました。

今回は「郵便による投票を追い風に、大逆転を演じたバイデン氏」として、11月3日(火)からバイデン氏が勝利宣言をした7日(土)夜までの、米大統領選挙の開票状況について書きます。


図内の州名右の数字は、その州の人口に応じて割り振られた選挙人の数、パーセント数はその時点でのリードポイントを示しています。

一部の報道によれば、投票日となった3日(火)夜、トランプ氏は、“民主党が選挙を盗もうとしている”、“我々は最高裁に行くだろう”、“全ての投票停止を望んでいる”などとツイートしました。

この3日(火)夜時点で、トランプ氏はテキサス州、フロリダ州、オハイオ州などの大票田で勝利し、213人の選挙人を獲得していました。同時に、勝敗が決定していなかった7つの州のうち、上図で示したノース・カロライナ、ジョージア、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、アラスカの6つの州でバイデン氏をリードしていました。

仮に、リードしていたこれら6つの州、すべてで勝利した場合、合計80人の選挙人を獲得できました。213人に80人を加えれば、293人です。つまり、勝利に必要な270人を大きく上回っていたわけです。3日夜の、各種メディアが困惑した、トランプ氏の一方的な“勝利宣言”の裏には、このような事情があったわけです。

一時、トランプ氏が勝利を手にしたかに見えましたが、トランプ氏の勝利が実現しなかったのは、報じられているとおり、“郵便による投票”が、圧倒的にバイデン氏寄りだったためです。史上最多といわれる郵便によって投じられた票は、バイデン氏が選挙戦を優位に進めていた時期に投函されたとみられます。そして、投票日翌日の4日(水)以降、郵便による投票が本格化し、バイデン氏の猛追が始まります。

4日(水)、使われなくなった工場が立ち並んでいる意味する“ラストベルト(rust belt 錆びれた地帯)”に含まれる、ウィスコンシン、ミシガンの両州で、バイデン氏は逆転勝利を収め、合計26人の選挙人を獲得しました。同時に、ジョージア、ペンシルベニアの両州の、トランプ氏のリードポイントが縮小し始めました。

5日(木)、ジョージア、ペンシルベニアの両州のトランプ氏のリードがほとんど無くなり、6日(金)、ジョージア、ペンシルベニアの両州は、バイデン氏優勢に変わり、ネバダ州のバイデン氏のリードポイントが拡大しました。

そして7日(土)、バイデン氏は、激戦区であり大票田のペンシルベニア、そして優勢を維持してきたネバダ州で勝利し、合計26人の選挙人を獲得。獲得した選挙人は270人を大きく超える290人に達し、その夜、勝利宣言をしました。

この5日間を振り返れば、投票日当日こそトランプ氏が優勢だったものの、その後は日を追うごとにバイデン氏が優勢になり、優勢に傾いた流れのまま、バイデン氏が逆転勝利を収めたと、言えます。

逆転勝利のカギは、“前例のない規模の郵便による投票”だったと考えられます。トランプ氏自身、開票が進むにつれ、郵便による投票の威力が絶大であることを実感してか、“リードは魔法のように消えた”とツイートしました。

図:米大統領選挙の開票の進捗 ※日時は米東部時間
米大統領選挙の開票の進捗

出所:AP通信のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。