金投資。一歩目は“イメージ”でOK。2歩目以降は“実態把握”が必要

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。53.43ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,855.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は14,325元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年03月限は350.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで775.1ドル(前日比1.3ドル縮小)、円建てで2,609円(前日比3円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月13日 18時49分頃 先限)
6,195円/g 白金 3,586円/g
ゴム 239.2円/kg とうもろこし 27,960円/t

●NY金先物(期近) 日足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金投資。一歩目は“イメージ”でOK。2歩目以降は“実態把握”が必要」

前回は、「緊急事態宣言、変異種発見…。金価格の上昇要因の一つ、有事のムードが拡大中」として、足元の、日本などの新型コロナの推定患者数について、書きました。

今回は、「金投資。一歩目は“イメージ”でOK。2歩目以降は“実態把握”が必要」として、1都3県に緊急事態宣言が発出された1月7日(木)から翌週月曜日までの、国内外の金相場の動きについて、書きます。

前回、金(ゴールド)は、大衆が負の感情を募らせれば募らせるほど、“last resort(最後のよりどころ)”として、魅惑的な輝きを放つと、書きました。この点は、筆者が考える、5つの金(ゴールド)市場を取り巻くテーマの1つ、“有事のムード”と直結するものです。

他のテーマの1つ、“代替資産”は、株や不動産などの資産を保有している人が、保有する資産の価値が目減りして不利益を被ることを回避するために、金(ゴールド)を買う行為を、そして、“代替通貨”は、ドルや他の主要国通貨を保有している人が、保有する通貨の価値が目減りして不利益を被ることを回避するために、金(ゴールド)を買う行為を、想定しています。

“有事のムード”が強まっている時は、株や不動産、ドルなどを持っていない人でも、金(ゴールド)を意識する時、とも言えます。しばしば、コロナ禍の折、不安感が強まっているため、これまで投資をしたことがなかった人が、金(ゴールド)を買うケースが増えている、などと言われるのは、新型コロナ起因の、大衆が負の感情を募らせる要因が複数存在すること、つまり、社会で“有事のムード”が強まりやすくなっていることが、要因と考えられます。

大衆が“不安”や“いら立ち”を募らせる時、つまり“有事のムード”が強まる時に、金投資を始めるケースは多いのだと思います。ニュースを見て生じる“直観”、“肌感覚”、“イメージ”などが、金投資の第一歩になっていると、考えられます。

確かに、“有事のムード”は、金(ゴールド)価格を押し上げる要因になり得るため、その“直観”、“肌感覚”、“イメージ”はある意味、“1歩目”としては、正しいかもしれません。では“2歩目以降”としては、どうでしょうか。

以下は緊急事態宣言が発出された日(2021年1月7日)の夕方から、1月12日(火)未明までの、国内外の金価格の推移です。

国内外ともに、金(ゴールド)価格が下落していることがわかります。日本で新型コロナの感染拡大抑止のための緊急事態宣言が発出・施行されても、米国で政局が不安定化しても、北朝鮮で核開発が進展する懸念が生じても、つまり“直観”、“肌感覚”、“イメージ”で価格が上昇すると感じる材料があったとしても、金(ゴールド)価格は下落することがあるわけです。

金投資における、“2歩目以降”は、“有事のムード”以外のテーマにも、留意する必要がありそうです。

図:国内外の金(ゴールド)価格の推移(2021年1月7日夕方から12日未明) 単位:NY金先物 ドル/トロイオンス 大阪金先物 円/グラム


出所:ブルームバーグより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。