米金利上昇に伴う下落した金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 次期財務長官に指名されているイエレンFRB前議長は、19日の上院公聴会で、ドルの価値が市場によって決定されることへのコミットメントを確認する見通し。事前テキストによれば、「一方は富の上に富を築き、もう一方の労働者世帯はどんどん取り残されていくK字型経済」が新型コロナのずっと前からあったと指摘。歴史的な低金利の今こそ、「大きな行動」が適切だと訴え、議会がさらなる支援策を承認しなければ深刻な景気後退のリスクがあるとして、議会は「大きな行動」を取る必要があるとの見解を示す模様。

 イエレン氏が「強いドルは国益」などとの連想を与えるような発言をすれば、もう一段のドル高・金安もあるかもしれないが、期待されているバイデン次期大統領による追加経済対策案は、議会審議を経て成立できるか否か不明で、審議の過程で規模は小さくなるのとの見方も出ている。FRBは当面、長期金利の上昇抑制に動くとの見方が根強く、積極財政による国債増発は不可避で、発行コストでもある利回りは低いほうが良い。バイデン政権も表向きは「強いドル」政策を示しても、コロナによる経済の大幅ダウンを考慮すると、緩やかなドル安を容認する可能性が強いのではないか?

 新型コロナ感染拡大とNY株式市場の相関が高まっているが、これは、コロナ感染拡大が景気後退による株価下落と言うようなファンダメンタルズに沿った反応ではなく、感染拡大がより大きなジャブ付きを呼び込むという期待につながっている状況だ。「実体経済」と乖離した「株高」は、しばらくは続きそうだが、どこかの段階で破綻を来たし、米金利上昇が、株式市場の懸念材料となる可能性も、中長期的には浮上してくるリスクもあるだろう。  


 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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