[Vol.956] プラチナ市場、この45年間で最大の“供給不足”

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。64.25ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,734.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は15,300元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年05月限は420.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで522.05ドル(前日比10.25ドル拡大)、円建てで1,863円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月17日 19時34分頃 先限)
6,081円/g 白金 4,218円/g
ゴム 270.9円/kg とうもろこし 30,020円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ市場、この45年間で最大の“供給不足”」

前回は、「プラチナ相場はVW問題発覚前の水準まで回復」として、長期的なプラチナ価格の推移を確認しました。

今回は、「プラチナ市場、この45年間で最大の“供給不足”」として、プラチナ市場の、超長期的な需給バランスの推移を確認します。

足元、なぜ、プラチナ価格は上昇しているのでしょうか。その理由を、データに求めます。3月10日(水)、プラチナの統計データを集計する世界的な機関であるWorld Platinum Investment Council(以下WPIC)は、四半期の統計を公表しました。

同機関のウェブサイトで公表されているデータによれば、2020年のプラチナ市場は、この45年間で最大の“供給不足”でした。

(1)新型コロナの感染拡大→景気悪化懸念→産業用需要減退懸念→プラチナ消費減少、(2)バイデン新政権誕生→クリーンエネルギー台頭期待→ディーゼル車に用いられるプラチナ消費減少という、2つの連想が働きやすかった2020年は、プラチナの需給バランスは大幅な供給過剰に陥ったように見えたものの、データで確認すれば、歴史的な供給不足だったわけです。

供給不足は、需給バランスが引き締まっていることを意味します。需給バランスの引締まりは、価格の上昇要因になり得ます。足元の記録的な価格上昇の背景には、先述の(1)や(2)の、イメージしやすい価格の下落シナリオを覆す、データが示す需給バランスの引締まりがあったと考えられます。

需給バランスは、供給-需要、で計算します。つまり、需給バランスは、供給と需要の2つの要素でできています。新型コロナの感染拡大によって需要が落ち込んでいることは、容易に想像がつきますが、供給にも、需要と同じように想像を巡らす必要があります。

次回以降、プラチナの需要と供給、それぞれの変化について、書きます。

図:プラチナの需給バランス(供給-消費) 単位:千トロイオンス


出所:WPICのウェブサイトのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。