基軸通貨体制に揺らぎ。東京五輪でのサイバー攻撃も要注意

著者:菊川 弘之
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 2014年以降のウクライナ危機を背景としたアメリカによる対ロシア制裁以降、ロシアは「脱ドル化」に舵を切っている。2018年から石油取引ロシア最大手のロスネフチ社は輸出契約の全てを、ノヴァッテック社も大部分を、ユーロ建てに変えている。ロシアと中国は、2018年6月の首脳会談で、二国間の貿易・投資・金融等においてロシア・ルーブルと人民元の利用を拡大していくことで合意。

 ロシアや中国をはじめ新興国の中央銀行や当局が米国債の保有を減らす一方、金を買い増す動きも顕著になっている。既に北京でもデジタル人民元のテスト運用が始まっており、基軸通貨を巡る米中ロの戦いは、激化していきそうだ。

 国際通貨基金(IMF)が行っている「公的外貨準備の通貨別構成(COFER)調査」によると、2020年第4四半期に中央銀行諸行の外貨準備高に占める米ドルの割合が59%と、過去25年間で最低の水準まで低下している。ユーロが導入された1999年以降、中央銀行の外貨準備に占める米ドル資産の比率は低下。世界経済で米ドルの地位は、徐々に低下している流れだ。中長期的には、ドル基軸通貨体制の行方が金の上値余地を決めていくだろう。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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