基軸通貨体制に揺らぎ。東京五輪でのサイバー攻撃も要注意

著者:菊川 弘之
ブックマーク
 ロシアのシルアノフ財務相は6月3日、同国政府系ファンドのナショナル・ウェルス・ファンド(NRW)「国民福祉基金」から完全に米ドル建て資産をなくし、ユーロ建てと人民元建て、さらに金のシェアを増やす方針を表明した。1ヶ月内に資産構成の変更を見込んでいる。ロシアのNRWは石油収入を積み立てたもので、当初は年金システムを支援するために設計された。5月1日時点で、総資産高は1859億ドル。同基金は現在、流動資産の35%に相当する約415億ドルをドルで保有する。ほぼ同額をユーロが占め、残りは人民元と金、円、ポンドに分散している。変更後は、ユーロ建てが40%、人民元建てが30%、金は20%となり、残りは円建てと英ポンド建てが5%ずつとなる予定だ。

 6月16日には米ロ首脳会談が開催予定だが、プーチン大統領はこれに先立ち、米国がドルを経済および政治戦争の手段にしていると批判し、ロシアが石油・ガス取引の決済にユーロなど他の通貨を使用する可能性があると牽制。ロシアの石油企業がドル建てでの決済をやめれば、ドルの深刻な打撃になるだろうと述べた。

 過去、ドルの基軸通貨体制を揺るがした例として、イラクのフセイン大統領が2000年9月14日「石油代金として、今後いっさいドルを受け取らない。ユーロで決済する」と宣言したことが有名だが、アメリカの「虎の尾を踏む」格好となり、失脚、処刑された。イラク戦争の開戦理由となった大量破壊兵器は発見されず、基軸通貨・石油利権を守るための口実であったとの見方(仮説)が、今では大勢だ。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

https://www.nstrading.co.jp/

http://market-samurai.livedoor.biz/