[Vol.1242] ロシアとベラルーシの化学肥料輸出

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反落などで。111.03ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,854.59ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は13,145元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年07月限は709.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで920.14ドル(前日比2.36ドル縮小)、円建てで3,772円(前日比17円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月25日 17時38分頃 6番限)
7,558円/g
白金 3,786円/g
ゴム 245.4円/kg
とうもろこし 52,110円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●シカゴ小麦先物(期近) 月足  単位:セント/ブッシェル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ロシアとベラルーシの化学肥料輸出」

前回は、「「食糧危機」を引き起こす3つの要因」として、「食糧価格高」の背景について、筆者の考えを書きました。

今回は、「ロシアとベラルーシの化学肥料輸出」として、「食糧価格高」の背景の一つである「生産量減少」の一因とみられる化学肥料の輸出減少懸念について、書きます。

ロシアとその隣国であり同盟国のベラルーシは、カリ鉱石の主要生産国です。同時に、両国は、カリ鉱石を利用して作る化学肥料の一種「カリ肥料」の主要輸出国でもあります。

各国の貿易統計を集約したThe Observatory of Economic Complexity(OEC)のデータによれば、世界全体に占める2つの化学肥料(カリ肥料と窒素肥料の合計)の輸出額シェアは、2カ国合わせて19.4%です。ロシアはカナダに次ぐ世界第2位、ベラルーシは中国に次ぐ4位です。(2020年)

USDA(米農務省)のデータによれば、近年、世界全体の主要穀物の生産量の増加率は、収穫面積の増加率よりも高いことがわかります(2010年度から2020年度)。

この間、単収(一定面積あたりの生産量。生産量÷収穫面積)の増加が、世界の穀物生産量の増加を支えたわけですが、それには、品種や農耕機械などの改良だけでなく、化学肥料の存在が大きかったと考えられます。

化学肥料は、窒素、カリウム、リンという、植物自身が土壌中から摂取することが難しい養分を補うために必要不可欠とされています。

報道によれば、ロシアは昨年秋から、ベラルーシはロシア侵攻前から、一定の条件のもとで、化学肥料の輸出を停止しているとされています。

これを受け、化学肥料の価格(グリーンマーケッツが集計する北米の肥料価格指数)は、ウクライナ侵攻後に騰勢を強め、足元、昨年夏の2倍弱の水準に達しています。(指数の集計が始まった2002年1月以降の最高値水準)

ロシアとベラルーシからの化学肥料の供給減少は、化学肥料価格を上昇させて農産物の生産コストを押し上げています。また、肥料そのものの供給減少は、今後、世界的な単収低下(≒農産物の生産量の低下)の要因となり、「食糧危機」を強める可能性があります。

図:世界のカリ肥料と窒素肥料の輸出シェア(2020年)


出所:The Observatory of Economic Complexityのデータをもとに筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。