[Vol.1244] 「食糧価格高」がもたらす4つの影響

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。114.50ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,855.58ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は13,220元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年07月限は730.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで914.78ドル(前日比4.58ドル拡大)、円建てで3,749円(前日比18円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月27日 17時48分頃 6番限)
7,562円/g
白金 3,813円/g
ゴム 246.4円/kg
とうもろこし 54,390円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●シカゴ小麦先物(期近) 月足  単位:セント/ブッシェル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「食糧価格高」がもたらす4つの影響」

前回は、「ウクライナの農産物輸出量と見通し」として、「食糧価格高」の背景の一つ「輸出量減少」の一端である、ウクライナの農産物輸出について、書きました。

今回は、「「食糧価格高」がもたらす4つの影響」として、前回までの4回で書いた様々な背景によって生じている「食糧価格高」がもたらす影響について、書きます。

以下は、筆者が考える「食糧価格高」がもたらす4つの影響です。「食品価格上昇(インフレ加速)」、「市民暴徒化懸念生む」「SDG's機運停滞懸念生む」「穀物メジャー株など関連商品上昇」という、影響が想定されます。

目下、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めを強化しています。「インフレ(物価高)退治」が目的とされているものの、今のところ、利上げや量的引き締めなどの金融引き締め策の強化は、資金の巡りを悪化させたり、新興国からの資金引き上げ(米国への回帰)を加速させたりする、金融市場におけるマイナスの側面が目立っています。

足元、インフレが進めば進むほど、FRBはやっきになって金融引き締めを強化し、それがさらにマイナスの面を増幅させる、悪循環ができつつあります。つまり「食糧価格高」は、FRBを介し、マイナスの面をもたらしているわけです。

また、思い起こせば、2010年初夏、ウクライナで大干ばつが発生したことをきっかけに、小麦価格が急騰し始め、トウモロコシと大豆がそれに追随しました。いわゆる「連想高」が起きました。

この時の「食糧価格高」は、「アラブの春」(2011年~)という政変の同時多発の主因となりました。コロナ禍、ウクライナ危機、米中対立など、混乱に枚挙に暇がない今、いつ現在の「食糧価格高」が政変の同時多発を起こしてもおかしくはないでしょう。

さらに、「食糧価格高」は、「SDG's(国連が定めた時速可能な開発目標)」を停滞させる可能性があります。食糧価格高騰が起きると、食糧の一部を転用して作られるバイオ燃料の生産が停滞したり、高い食糧を買うことができず飢餓が進行する国が増えたりして、エネルギーや食糧供給の安全保障が脅かされるためです。

仮に、ロシアがウクライナに侵攻した動機に以下の2つが含まれているのであれば、ウクライナ危機は長期化する可能性があります。

・「脱炭素」を急速に進めて化石燃料を痛烈に批判し続けた西側に対し、インフレを長期化させて経済的なダメージを与え続けること
・資本主義を破壊するすべについて触れた、およそ100年前のロシア革命の指導者レーニンの言葉を体現すること

ウクライナ危機の長期化は、「食糧価格高」が長期化することを意味します。この場合、「食糧価格高」がもたらす4つの影響の最後で述べた、「穀物メジャー株など関連商品上昇」も、長期化する可能性があると、筆者は考えています。(短期的な急騰ではなく、長期視点の上値切り上げ)

図:「食糧価格高」による4つの影響(筆者イメージ)


出所:筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。