[Vol.1273] 悪手2-2:長期投資に「先物型」間接商品を用いる

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。98.50ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,742.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は12,645元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年08月限は639.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで897.1ドル(前日比3.4ドル拡大)、円建てで3,913円(前日比90円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月7日 11時32分頃 6番限)
7,559円/g
白金 3,646円/g
ゴム 249.3円/kg
とうもろこし 45,950円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 月足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「悪手2-2:長期投資に「先物型」間接商品を用いる」

前回は、「悪手2-1:長期投資に「先物型」間接商品を用いる」として、筆者が考える、コモディティ投資における3つの悪手(あくしゅ)のうちの2つ目について、述べました。(2つ目は2-1と2-2に分割)

今回は、「悪手2-2:長期投資に「先物型」間接商品を用いる」として、「先物型」であることが、なぜ長期投資に向かないかについて、述べます。

「先物型」は、現物価格との連動性が高い傾向がある「間接」投資にあたる、投資信託や国内外のETF(上場投資信託)、ETN(上場投資証券)にみられます。前回例示した金融商品は「国内ETN」の一つです。

こうした「間接」投資にあたる金融商品は、「間接」ゆえ、何か(原資産)の価格に連動することを目指す設計になっています。そして、原資産が「先物」である金融商品が「先物型」です。

先物は、ほとんどの銘柄において、定期的に取引の期限が到来します。期限到来の都度、納会(期近限月(げんげつ)の取引終了)が訪れ、取引が活発な限月が交代します。この限月交代が、「先物型」金融商品の取引価額に影響を及ぼす場合があります。

参照する限月が交代することを、ロールオーバーと言います。この際、以下のように納会日までの日数が長い限月ほど、価格が高い「順ザヤ(コンタンゴ)」だった場合、のりかえ時にコストが発生し、原資産は先物価格に対して目減りします。

これにより、国際価格(先物価格)と原資産に連動することを目指す金融商品の価格に、乖離(かいり)が生じます。以下は、乖離が大きくなった2015年7月時点の、原資産と同じように動く傾向があるNY原油先物の限月ごとの価格です。

当該金融商品の発行者のウェブサイトには、「(当該金融商品は)一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市場の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品」という記載があります。(前回示した「中期」のグラフのように、相関係数が「+0.95」と非常に高い連動性があることが確認できます)

毎日報じられる国際商品価格と、保有する金融商品の価格の推移が異なる状況におちいる「悪手」を指さぬよう、目論見書などで金融商品が先物型かどうかを確認することが望ましいですが、確認が難しい場合、長期(月足で5年以上)と中期(日足で1年くらい)の二つで、国際価格と当該金融商品の値動きを見比べてみるとよいでしょう。

図:2015年7月1日(原油相場急落・低迷時)のNY原油先物の価格 単位:ドル/バレル


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。