[Vol.1282] 環境配慮はプラチナの需要を維持する側面あり[2]

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。96.80ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,684.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は11,760元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年09月限は659.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで849ドル(前日比4.7ドル縮小)、円建てで3,801円(前日比13円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月21日 17時25分頃 6番限)
7,485円/g
白金 3,684円/g
ゴム 237.7円/kg
とうもろこし 44,660円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「環境配慮はプラチナの需要を維持する側面あり[2]」

前回は、「環境配慮はプラチナの需要を維持する側面あり」として、プラチナの需給を確認しました。

今回は、「環境配慮はプラチナの需要を維持する側面あり[2]」として、「環境配慮」とプラチナの需要のうち大きな割合を占める「自動車排ガス浄化装置向け需要」との関係について、筆者の考えを述べます。

前回、「脱炭素」を推進して地球環境を守ろうとする動きや、それに乗じてビジネスを拡大しようとする動きの影響で、プラチナの主要需要である「自動車排ガス浄化装置」の需要が減少する可能性があることについて、述べました。

とはいえ、前回述べたように、同需要はコロナショック後、回復傾向にあり、2022年はこの約10年間の平均を上回る見通しです。以下のグラフの通り、自動車1台あたりに使われる排ガス浄化装置向け貴金属の量が増加していることが大きいと、筆者は考えています。

世界全体の「排ガス規制」が年々厳しくなっています。この動きに対応すべく、自動車部品各社は、排ガス浄化装置に使う貴金属の量を増やし、同装置の性能を向上させていると、考えられます。

内燃機関(エンジン)をもつ自動車の生産・販売台数が減少しても、排ガス浄化装置向けに使われる貴金属の量が減らないのはこのためだと、考えられます。

環境配慮の動きは、プラチナにとって需要を減少させる要因であるものの(内燃機関の自動車生産台数が減少)、同時に、需要を維持する要因でもある(排ガス規制強化が1台あたりの貴金属需要を増やす)、と言えます。

ただ、「環境配慮→エンジン否定→プラチナ需要減少」というイメージの方が、「世界的な排ガス規制強化→関連する貴金属需要維持」よりも、わかりやすいため、環境配慮の動向は、プラチナ価格の「上値を限定的にする」「急騰を抑制する」要因になりやすいと考えます。

図:世界の自動車生産台数と1台あたりの排ガス浄化装置向け貴金属消費量(筆者推計)
図:世界の自動車生産台数と1台あたりの排ガス浄化装置向け貴金属消費量(筆者推計)

出所:ジョンソンマッセイ、国際自動車工業連合会などのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。