[Vol.1284] なぜ銅(カッパー)は「医者」と呼ばれるのか?

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。93.56ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,725.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は12,120元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年09月限は639.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで862.7ドル(前日比1.05ドル縮小)、円建てで3,788円(前日比30円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月25日 大引け 6番限)
7,530円/g
白金 3,742円/g
ゴム 237.9円/kg
とうもろこし 44,080円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY銅先物(期近) 日足  単位:ドル/ポンド
NY銅先物(期近) 日足  単位:ドル/ポンド

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「なぜ銅(カッパー)は「医者」と呼ばれるのか?」

前回は、「不可逆的機運「脱炭素」起因の長期需要増加観測」として、「環境配慮」起因の、超長期視点のプラチナの需要について、筆者の考えを述べました。

今回は、「なぜ銅(カッパー)は「医者」と呼ばれるのか?」として、「ドクター・カッパー」について、述べます。

しばしば「ドクター・カッパー」という言葉を見聞きします。ドクター=医者(doctor)、カッパー=銅(copper)で、「銅の医者」という意味です。「銅は景気の先行きを診断する存在」と言われています。

なぜ銅が景気の先行きを診断する存在だと言われているのでしょうか。銅が、機械、建設、輸送などの、景気と関りが深い社会の基幹分野で幅広く用いられ、「銅の需要動向が、景気の先行き指し示す」、というイメージが浸透しているためです。

以下のグラフのとおり、先進国の一つ日本では、銅は、機械(一般・精密)、建設(電線含む)、輸送(自動車など)、金属製品、通信・電力など、わたしたちの生活のあらゆるところで用いられています。

10円玉やスポーツの国際大会で3位の選手に授与されるメダルの素材は、ほぼ銅ですが、こうした需要は、ほんの一部にすぎません。

なぜ、銅は幅広い分野で活躍することができるのでしょうか。その理由は「銅の性格」にあります。銅には、さびにくい、加工しやすい、電気を通しやすい、熱を通しやすい、比較的入手しやすい、などの性格があります。

こうした性格はいずれも、人類にとって都合が良く、国家の発展に貢献します。国家が発展するところに銅がある、と言えるでしょう。

「発展・好景気→銅需要増加」という流れがいつしか、「銅の需要動向が、景気の先行き指し示す」というイメージに置き換わったわけですが、この「ドクター・カッパー」。筆者はいくつか注意しなければならない点があると考えています。

筆者は常々、「イメージしやすい話ほど、落とし穴がある」と考えています。「ドクター・カッパー」は、「有事の金(ゴールド)」「OPEC減産は原油価格上昇」「プラチナは自動車排ガス浄化装置向け需要がメイン」などと並ぶ、注意すべき、イメージしやすいキーワードの一つです。

次回以降、「ドクター・カッパー」の注意点について、述べます。

図:日本の銅需要内訳(2019年) 単位:千トン
図:日本の銅需要内訳(2019年) 単位:千トン

出所:JOGMECのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。