[Vol.1296] 需給バランスは相場動向を示唆していない?

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。90.16ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,807.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は12,925元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年09月限は675.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで879.75ドル(前日比1.2ドル拡大)、円建てで3,824円(前日比58円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月10日 12時58分頃 6番限)
7,736円/g
白金 3,912円/g
ゴム 230.3円/kg
とうもろこし 46,700円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「需給バランスは相場動向を示唆していない?」

前回は、「原油市場の材料のバランスを確認」として、足元の原油市場の環境を確認しました。

今回は、「需給バランスは相場動向を示唆していない?」として、世界全体の石油の需給バランスを確認します。

世界の石油市場の需給バランスは崩れているのでしょうか。足元の原油相場の下落は、需給の緩みによるものなのか、という問いです。

EIAのデータによれば、下のグラフのとおり、今年3月から6月まで、小幅な供給超過でした。ウクライナ危機起因の世界的な供給懸念が漂う環境下で、供給超過だったわけです。

EIAは、夏から秋にかけて供給超過がやや拡大するものの、12月には需要期到来のため需要超過に転じることを見込んでいます。この「やや拡大」の「やや」は、新型コロナがパンデミック化した時のような大規模なものではない、という意味です。

原油相場が複数回120ドルを上回ったウクライナ危機下で供給超過だったこと、見通されている供給超過の規模も「やや」の範囲であることを考えれば、需給バランスが、足元の下落を説明しているとは言い難く、今後も、供給超過であったとしても原油相場が上昇する可能性があると感じます。

現時点では、世界全体の動向を網羅する需給バランスを、足元や今後の原油相場の動向を考える材料にするのは、適切ではないのかもしれません。ウクライナ危機勃発後の原油市場は、全体像ではなく、個別の材料を重視している可能性があります。

図:世界全体の石油の需給バランス 単位:百万バレル/日量
図:世界全体の石油の需給バランス 単位:百万バレル/日量

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。