[Vol.1443] 天然ガスは原油よりも極端な非民主状態

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。68.86ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,933.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年05月限は11,675元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年05月限は503.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで944.8ドル(前日比1.70ドル拡大)、円建てで4,078円(前日比25円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月17日 大引け 6番限)
8,225円/g
白金 4,147円/g
ゴム 208.5円/kg
とうもろこし 42,880円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「天然ガスは原油よりも極端な非民主状態」
前回は、「原油生産国でも非民主国家が台頭」として、原油生産国の状況(自由民主主義指数 0.5以上と0.5未満)を確認しました。

今回は、「天然ガスは原油よりも極端な非民主状態」として、天然ガス生産国の状況(自由民主主義指数 0.5以上と0.5未満)を確認します。

以下の図は、天然ガスを生産している国々の、自由民主主義指数の状況を示しています。原油と同様、2011年以降、非民主国家が増加、民主国家が減少していることがわかります。

天然ガスの生産シェアについては原油と異なり、もともと「非民主」が進行していました。2011年以降、この傾向がさらに目立っています。非民主国家の天然ガスの生産シェアは59%です(2021年)。

原油と同様、ウクライナ危機勃発により、西側(多くが民主国家)と、非西側(多くが非民主国家)の間の溝が後戻りできないくらい深まり、民主国家において需給ひっ迫感が強まっています。ロシアがウクライナ危機を巡る制裁の応酬の意味で、「出さない」姿勢を鮮明にしています。西側の民主国家のおける需給ひっ迫は、まだ続く可能性があります。

ウクライナ危機がある以上、民主国家が非民主国家との距離を縮めることは、非常に難しいと言えるでしょう。同危機勃発前のように、金銭や技術など、何らかのメリットを提供して、彼らが持っているエネルギーや金属を融通してもらうことが、難しくなりつつあることは、報じられているとおりです。

こうした状況が長引くことが想定される中、民主的であることを「良し」とする西側における、エネルギーや金属の価格はどうなるでしょうか。非民主国家の政治的思惑が強まれば、今よりも調達が難しくなる、引いては「西側の価格」が上昇することもあるでしょう。

今のところ、民主国家と非民主国家、どちらが主要品目を持っているかと問われれば、非民主国家となるでしょう。非民主国家が、ウクライナ危機をたてに、過去の「環境問題」「人権問題」への急いだ対応のツケを払うよう、要求しているように見えなくありません。しばらく、供給制約起因のインフレが続く可能性があると、筆者は考えています。

図:天然ガス生産国の状況(自由民主主義指数 0.5以上と0.5未満)
図:天然ガス生産国の状況(自由民主主義指数 0.5以上と0.5未満)

出所:V-Dem研究所およびBPのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。