[Vol.1449] EUの方針撤回のカギとなった「合成液体燃料」

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。73.35ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,972.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は11,930元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年05月限は519.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで995.5ドル(前日比6.50ドル拡大)、円建てで4,181円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月28日 16時52分頃 6番限)
8,226円/g
白金 4,045円/g
ゴム 210.2円/kg
とうもろこし 42,120円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「EUの方針撤回のカギとなった『合成液体燃料』」
前回は、「崩壊するのか!?西側の『脱炭素神話』」として、EU(欧州連合)の新車販売における方針について、述べました。

今回は、「EUの方針撤回のカギとなった『合成液体燃料』」として、合成液体燃料の製造過程と二酸化炭素の相殺について、述べます。

これまでEUは、2035年以降は走行時に二酸化炭素を排出しないEVやFCV(燃料電池車)などに限って新車販売を認めるとしていました(2022年10月に合意)。これは、事実上、内燃機関車(ハイブリッド車を含む)の新車販売を禁止するもので、日本でも大きな話題になりました。

EUは、2050年までに域内で排出される温暖化ガスを実質ゼロにする目標を掲げており、自動車の電動化を図ること(EVを流通させること)により、目標達成に近づくと踏んでいたわけですが、なぜ今回、方針を撤回したのでしょうか。

報道では、今回の方針撤回は、フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツグループなど世界的な自動車大手を抱えるドイツによる働きかけが大きかったとされています。彼らは、内燃機関車の新車販売を可能にするために、「合成液体燃料(e-Fuel イーフューエル)を使うこと」を条件に掲げ、合意にこぎつけました。

合成液体燃料は、二酸化炭素を使って製造します。このため、同燃料を使って走行した自動車が排出する二酸化炭素は、「オフセット(相殺)」されたとみなされます。この点が、EUの方針撤回の主な根拠になったと考えられます。

その他、(1)内燃機関車で培ったノウハウとインフラを使用できること、(2)技術があれば消費国でも製造できること、(3)電気よりもエネルギー出力が大きい(液体であることに重要な意味がある)ことなどが、合成液体燃料のメリットに挙げられます。こうした点も、EUの方針撤回を後押しした可能性があります。

図:合成液体燃料の製造過程と二酸化炭素の相殺
図:合成液体燃料の製造過程と二酸化炭素の相殺

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。