[Vol.1532] 「人類が住まない地球がもう一つ」必要

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。79.62ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,977.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は12,175元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年09月限は603.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで997.05ドル(前日比1.05ドル縮小)、円建てで4,551円(前日比20円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月27日 17時51分時点 6番限)
8,886円/g
白金 4,335円/g
ゴム 199.2円/kg
とうもろこし 42,090円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:セント/ブッシェル
シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『人類が住まない地球がもう一つ』必要」
前回は、「新興国・途上国の穀物需要が二倍に!?」として、世界三大穀物(トウモロコシ、米、小麦)の一人あたり消費量について、述べました。

今回は、「『人類が住まない地球がもう一つ』必要」として、世界三大穀物(トウモロコシ、米、小麦)の収穫面積について、述べます。

「新興国の穀物需要が急増するのであれば、それに見合うだけ供給を増やせばよい」と、誰しも考えると思いますが、実際のところ、そう簡単ではありません。以下は、世界三大穀物の収穫面積の推移です。

近年、新興国・途上国の収穫面積は、増加しています。「この増加傾向を続ければよい」という声が聞こえてきそうですが、各種報道などを参考にすれば、この面積増加は森林伐採などの環境破壊によって実現したものであると、考えられます。

「望まれない収穫面積増加」が、長期化するとは考えにくいでしょう。森林が減少すれば、吸収できる大気中の二酸化炭素の量が減り、同時に大気中に排出される酸素の量が減少します。「焼き畑」によって畑の面積を拡大させた場合は、大気中に大量の二酸化炭素を排出してしまいます。

森林伐採でも焼き畑でも、生態系を変化させてしまう可能性が高まります。環境問題解決を推進している先進国は、こうした手段による収穫面積の増加を認めないでしょう。

社会や政治的な圧力により、新興国・途上国の収穫面積は今後、伸び悩む可能性があります。このため、新興国・途上国の需要は急増しても、それに見合うだけの供給を実現できない可能性があります(先進国の収穫面積はすでに横ばいになっている。増やさないのではなく、増やせない可能性がある)。

作付面積や単収(単位面積当たりの収量)が今と変わらなければ、途方もない新興国・途上国の需要増加を満たすため、「人類が住まない地球がもう一つ」必要になる時がくるでしょう。

図:世界三大穀物(トウモロコシ、米、小麦)の収穫面積 単位:百万ヘクタール
図:世界三大穀物(トウモロコシ、米、小麦)の収穫面積

出所:USDA(米農務省)のデータおよびIMF(国際通貨基金)の資料をもとに筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。