[Vol.1628] 今こそ実情に即した分析を

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.02ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,057.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,520元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年02月限は546.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1088.3ドル(前日比11.30ドル拡大)、円建てで4,962円(前日比6円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月15日 17時41分時点 6番限)
9,292円/g
白金 4,330円/g
ゴム 237.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「今こそ実情に即した分析を」
前回は、「60ドルから最大120ドルで推移か」として、筆者が考える2024年原油相場見通し(23年12月11日時点)について述べました。

今回は、「今こそ実情に即した分析を」として、NY原油先物市場における取引参加者の数について述べます。

ここまでの数回で述べてきたように、近年の原油相場を分析するためには、時間軸ごとに材料を分類した上で、それぞれの材料起因の圧力を相殺する必要があります。そうすることで初めて、価格動向の説明をしたり今後を見通したりすることができます(そうしないと説明できない値動きが大変多い)。

このような説明をすると、しばしば「近年の原油相場は複雑化している」という返答をいただくことがあります。おっしゃることはよくわかります。しかし、複雑化していることは事実でしょう。ではなぜ、複雑化した(してしまった)のでしょうか。

その一因を、取引参加者の数に見ることができます。以下は、CFTC(米国商品先物取引委員会)が公表している、先物市場で売買を行う「取引参加者(Traders:CFTCに報告義務がある機関投資家や売買を専門に行っている業者、生産者などの実需家など)」の数です。

足元の取引参加者の数(333)は、30年前(141)のおよそ2.3倍です。取引参加者はそれぞれ「思惑(≒意志)」を持っています(AIであれば売買方針)。取引参加者が多くなればなるほど、市場はさまざまな種類の思惑で満たされます。

これは「市場が複雑化したこと」の一つの過程であるといえます。取引参加者が増えて複雑化した市場を分析するためには、過去の常識(単純さが正義)による分析が通じにくくなっていることを容認した上で、分析手法を自ら「ある程度」複雑化させる必要があります。

今一度、[Vol.1625] 再確認「原油市場を取り巻く環境」で述べた「図:原油市場を取り巻く環境」および、[Vol.1626] 24年は「供給懸念と需要回復の両立」で述べた「図:2023年に目立った動向と2024年の予想」を参照の上、原油相場を見ていただけるとよいと思います。きっと、過去の常識にとらわれない、足元の実情に即した分析ができると思います。そうすることで、2024年の原油相場の動向がより鮮明に見えてくると考えます。

図:NY原油先物市場における取引参加者の数
図:NY原油先物市場における取引参加者の数

出所:CFTCのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。