[Vol.1653] 向こう側(産油国)の心理状態を考える

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。76.10ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,016.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,760元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年03月限は572.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1109.2ドル(前日比8.10ドル拡大)、円建てで5,262円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月25日 18時16分時点 6番限)
9,564円/g
白金 4,302円/g
ゴム 285.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「向こう側(産油国)の心理状態を考える」
前回は、「『原油相場は上がってしまう?』の心理」として、株式市場と原油市場のちがいについて述べました。

今回は、「向こう側(産油国)の心理状態を考える」として、消費国の向こう側にいる産油国の考えについて述べます。

主要な西側の消費国は、ガソリン車の新車販売を具体的な期限を決めて禁止することを決めるなど、「脱炭素」を掲げて石油を使わない世界を目指しています。そしてその向こう側のOPEC(石油輸出国機構)プラスを中心とした非西側産油国は以下の通り、それにあらがう姿勢を鮮明にしています。両者の思惑が衝突しているのです。

2023年春、日本でとある要人が原油相場は「当面売りが続く可能性がある」と発言しました。欧米の銀行の連鎖破綻をきっかけに、需要が減退することをその理由に挙げていましたが、その後も原油相場は高値を維持し、一時は90ドルを超える場面もありました。

需要減退→原油相場下落という需要面だけでなく、同時進行していたOPECプラスの減産→供給減少→原油相場上昇という供給面のシナリオを加味する中立的な分析が必要でした。

IMF(国際通貨基金)は、2023年と2024年のサウジアラビアを含む主要産油国の財政収支が均衡するために必要な原油価格を70ドル近辺とみています。産油国は「この水準を割らせたくない」と考えている節があります。

OPECプラスは2023年6月の会合で、減産を2024年12月まで続けることを決定しています(減産の規模が変わる可能性は大きい)。このような産油国側の状況を考慮しなければ、中立的な原油市場の分析はできません。

図:消費国の向こう側にいる産油国の考え
図:消費国の向こう側にいる産油国の考え

出所:筆者作成、イラストはPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。