[Vol.1668] NISA利用の長期投資は最高の生涯学習

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.03ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,017.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)春節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心)春節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1112.85ドル(前日比3.15ドル拡大)、円建てで5,346円(前日比2円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月16日 16時50分時点 6番限)
9,688円/g
白金 4,342円/g
ゴム 301.7円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「NISA利用の長期投資は最高の生涯学習」
前回は、「株価上昇のために西側はテーマを創造」として、リーマンショックを起点とした「現実」および「偶像」の状況について述べました。

今回は、「NISA利用の長期投資は最高の生涯学習」として、1990年以降の世界全体の民主主義の変遷と市場環境(筆者イメージ)ついて述べます。

以下の図の通り、民主主義の世界的な拡大がはじまった1990年前後の市場環境は、単純なつくりだったため、自分視点で現実だけを見て経済的な側面のみのアプローチで分析が可能でした。いわゆる経験則や相場格言が当たる時代でした。

しかし、リーマンショック後に西側がテーマを創造して以降、民主主義は行き詰まりを見せはじめ、市場分析の際は複雑さを容認したり他人や偶像を意識したり、さらには社会全体を網羅したりしなければならなくなりました。

相場分析に多次元の思考が求められ、「頭の中に立体的な映像を描くこと」が必要になりました。一元的であることが許された1990年前後の考え方では到底追いつかなくなっているのです。

そして2020年以降、新型コロナの感染拡大やウクライナ戦争勃発、中東での戦争拡大などを機に、より一層、複雑、他人、偶像、社会を意識しなければならなくなりました。こうした市場環境に対応するためには、今まで以上に、より一層、頭の中に立体的な映像を描くことが求められます。

例えば、スマートフォンやパソコンなどの情報機器を操作する際、少なからず「見えないもの」を頭の中でイメージ(映像化)すると思います。このボタンをタップやクリックをすると次にどんな画面が出てくるのだろうと。また、読書の時はほとんど常に、頭の中に映像を作り出していると思います。

頭の中に見えないものを映像化することは、複雑、他人、偶像、社会といった立体的な思考を必要とする世界を理解するために欠かせないスキルです。

こうしたスキルを磨くための即効性のある方法は、読書のほか、タップする前に次の画面を想像する、食べ物を口に入れる前に味を想像する、などが挙げられます。(すぐにタップしない、すぐに口に入れないなど、行動を数秒保留することは、別の意味で思考を深める非常に重要な動作です)

頭の中で映像化する習慣が身に付いたあとは、浮かんだ映像を頭の中で裏返してみたり、形を変えてみたり、色を付けて(変えて)みたりします。こうすることで視点を変えて物事を捉えるスキルが磨かれます。また、同じテーマで複数の映像が浮かんだ場合は、共通点を探したり、足したり引いたりして抽象化し、全体像の把握に努めます。

こうした頭の中での動作は、市場環境の変化に合わせた措置として、現代の相場を分析するのに大変に役立ちます。近年、ほとんどの市場では、上昇要因と下落要因が交錯しているため、一元的な分析は行き詰まりを見せています。さまざまな材料を頭の中で映像化し、それらの関係性を明確にすることが、現代の相場分析に欠かせなくなっています。

この考え方が効果を発揮するのは、市場分析の分野だけではありません。一般社会で生活する時にも大変に役立ちます。雨のように無数に降り注ぐ情報の取捨選択や解釈、人とのコミュニケーション、大小さまざまなイベントや問題発生時の対応、子育てや夕飯のメニュー選択まで、あらゆる場面で役立ちます。

こうした考え方に気が付いた瞬間、見えてくる景色が一変します。複数の著名人もそう述べています。スキルを磨く場が相場分析であったとしても、こうしたスキルは生活にも大いに役立ちます。そう考えると、現代ならではの相場分析を深めることは、生きることを楽しくすることにつながるといえます。実は長期投資は、「最高の生涯学習の対象」なのだと思います。

図:1990年以降の世界全体の民主主義の変遷と市場環境(筆者イメージ)
図:1990年以降の世界全体の民主主義の変遷と市場環境(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。