[Vol.1708] 中東情勢悪化は短期的・直接的な要因

著者:吉田 哲
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原油反発。中東情勢緊迫化などで。86.02ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,402.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,625元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年06月限は669.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1418.4ドル(前日比19.95ドル拡大)、円建てで7,022円(前日比173円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月16日 14時35分時点 6番限)
11,837円/g
白金 4,815円/g
ゴム 314.1円/kg
とうもろこし 39,980円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「中東情勢悪化は短期的・直接的な要因」
前回は、「金(ゴールド)と原油相場は暴騰状態」として、国内外の金(ゴールド)、原油、株価の動きについて述べました。

今回は、「中東情勢悪化は短期的・直接的な要因」として、イランとイスラエル、イランが支援するイスラム武装組織「抵抗の枢軸」の直近の動きについて述べます。

足元の中東情勢の緊迫化が、金(ゴールド)や原油の価格が上昇している主因だと言われています。1970年代後半に起きた中東情勢の緊迫化を連想した投資家が、短期的な価格上昇を見越して買っていると考えられます。

1970年代後半といえば、第四次中東戦争、イラン革命、在イラン米国大使館人質事件などが起きた期間です。あの時、有事ムードの高まりで金(ゴールド)が、供給懸念で原油が、それぞれ短期的な急騰を演じました。

足元、下図の通り中東のイスラエルと、イランおよびイランが支援する「抵抗の枢軸(すうじく)」と呼ばれる複数のイスラム武装組織との間で武力衝突が起きています。

「抵抗の枢軸」とは、ガザ地区を実効支配し、昨年10月にイスラエルを奇襲した「ハマス」、イスラエルの北部に隣接するレバノンに拠点を置く「ヒズボラ」、アラビア半島南部に位置するイエメンに拠点を置く「フーシ派」、シリアやイラクで活動する民兵組織、イラン革命防衛隊などです。

昨年10月の奇襲以降、ハマスはイスラエルと交戦中です。3月25日に国連安全保障理事会で両者の停戦決議が採択されたものの、イスラエルは、採択の際に棄権をして同国を擁護する姿勢を取らなかった米国に対して「明らかな後退」と反発するなど、戦闘を停止するそぶりは見られません。

そればかりか、イスラエルは停戦決議採択後の同29日に北東部で隣接するシリアを空爆して「ヒズボラ」のメンバーを殺害したり、4月1日には在シリアイラン大使館をミサイルで攻撃して「イラン革命防衛隊」の司令官らを殺害したりするなど、次々にイランが支援する「抵抗の枢軸」を攻撃しました。

そうしたイスラエルの行動に業を煮やしたイランはついに、4月13日、敵対し始めて45年目で初めて、イスラエルに本土攻撃を仕掛けました。前日にバイデン米大統領が「やめろ」「成功しないだろう」と自制を求めましたが、イランは聞き入れませんでした。

同日、フーシ派もイスラエルにドローンを発射したり、ヒズボラも戦闘態勢を強めたり、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡(中東産原油輸送の大動脈)付近でイスラエルに関わる船舶を拿捕(だほ)したりしました。イランによる本土攻撃、「抵抗の枢軸」による同時多発的な攻撃が、イスラエルを襲っていると言えます。

金(ゴールド)と原油の価格が短期的な暴騰状態にあるのは、中東情勢が大規模な報復合戦に移行し、不安と供給懸念が拡大しているためだと言えます。

図:イスラエルとイラン、イランが支援するイスラム武装組織「抵抗の枢軸」の直近の動き
図:イスラエルとイラン、イランが支援するイスラム武装組織「抵抗の枢軸」の直近の動き

出所:各種資料およびmap chartを用いて筆者作成 イラストはPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。