[Vol.1719] 積み立て効率化のコツ「暴落を利用する」

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。79.64ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,320.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 労働節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心) 労働節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1350.8ドル(前日比5.30ドル縮小)、円建てで6,772円(前日比20円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月2日 16時30分時点 6番限)
11,553円/g
白金 4,781円/g
ゴム 302.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「積み立て効率化のコツ『暴落を利用する』」
前回は、「『暴落』が運用を好転させる場合あり」として、前回述べた二つの積み立てシミュレーションの累積資産額について述べました。

今回は、「積み立て効率化のコツ『暴落を利用する』」として、前回までの数回で述べた積み立てシミュレーション(2パターン)の累積保有数量について述べます。

シミュレーションの結果である暴落パターンの資産の額が暴騰パターンの資産の額を(わずかながら)上回ったことと、価格が下落しても利益が出たことの理由は同じです。この取引が「積み立て」だからです。

多くの場合、大まかな収益の計算は「保有数量×価格」で行います。積み立ての場合、毎月一定額を購入に充てるため、価格が変動すると購入する数量が変動します。

下の図は、暴騰パターンと暴落パターンの累積保有数量の推移です。最終的な保有数量は、暴騰パターンが421グラム(貴金属の積み立てを想定しているため、数量の単位はグラム)、暴落パターンが983グラムでした。暴落パターンは暴騰パターンの2倍以上になりました。

暴落パターンの価格が長期で低迷した期間(2044年3月から2064年2月)、保有数量の増加のスピードが、他の期間に比べて速かったことが分かります。まさにこれは、月々の投資額が変わらない積み立てだからこそ起きていることです。

暴騰パターンと暴落パターンの月々の購入数量の推移を確認すると、暴落パターンは、最後の10年間、価格が上昇したため月々の購入数量は減少しました。それでも、価格が長期で低迷した期間の月々の購入数量は、高止まりしました。

一方、価格が一度も下落することがなかった暴騰パターンの月々の購入数量は、一度も増加することはありませんでした。月々の投資額は一定であるため、価格上昇が優先されると月々の購入数量は減ります。積立投資においては、「価格高騰は月々の購入数量を減らすこと」でもあるのです。

さらに言えば、価格が「ゼロ円」に近づけば近づくほど、月々の購入数量は増加しやすくなります。仮に月々の投資額が9,835円(1万円の投資金で購入時の手数料1.65%を考慮)だったとして、価格が8,500円から6,500円に下がると、購入できる月々の数量は0.3グラム増えます。

価格が6,500円から4,500円に下がると(同じく2,000円下落)、同0.6グラム増えます。4,500円が2,500円に下がると1.7グラム増、2,500円が500円に下がると15.7グラム増加します。暴落パターンの月々の購入数量が価格急落時に曲線的に増加したのはこのためです。

積立投資においては、「価格が安い(ゼロ付近での低迷ならなお良い)=保有数量が増えやすい」といえるでしょう。保有数量が効率的に増えれば、それだけ資産の額(保有数量×価格)を大きくしやすくなります。

だからこそ、価格が取引開始時の水準まで戻らなくても利益が出るのです。さらには当該シミュレーションのように、暴騰パターンよりも大きな利益が出る場合さえあります。

ここまでの数回で述べたシミュレーションを基に考えれば、積立投資に適した銘柄の特徴は、「しばしば急落すること」だといえます。そして、暴騰パターンのような史上最高値を維持・更新し続ける銘柄は、積立投資には向いていないといえます。

株価が暴落すると不安になる方は多いと思います。ですが、積立投資をしているのであれば、目の前で起きている暴落は保有数量を普段以上に増やす好機だといえます。暴落している時こそ、積立投資の本質に立ち返ることが重要だと筆者は思います。

積立投資を効率化させるには、いかに価格下落を利用するか、です。このため筆者は、積立投資家にとって「暴落は利用するもの」だと考えています。積立投資の本質を意識することは、急落がもたらす不安を小さくしてくれると筆者は考えます。

図:積み立てシミュレーション(2パターンの累積保有数量)単位:グラム
図:積み立てシミュレーション(2パターンの累積保有数量)単位:グラム

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。