[Vol.1739] フォルクスワーゲン問題の呪いは継続中

著者:吉田 哲
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原油反発。OPECプラスの減産延長などで。77.07ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,347.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は15,145元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年07月限は595.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1310.25ドル(前日比6.45ドル拡大)、円建てで6,572円(前日比47円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月3日 16時50分時点 6番限)
11,777円/g
白金 5,205円/g
ゴム 338.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「フォルクスワーゲン問題の呪いは継続中」
前回は、「『人の行く裏に道あり花の山』は実現できる」として、S&P500種指数と原油相場の推移について述べました。

今回は、「フォルクスワーゲン問題の呪いは継続中」として、プラチナと金(ゴールド)の国際価格について述べます。

プラチナはこの10年弱で「長期低迷」が定着しました。2020年に発生したコロナショック時の下落率が他の主要銘柄に比べて軽微だったことは、プラチナがもともと長期低迷状態にあったことが大きく影響しているとみられます。

プラチナと同じ貴金属の金(ゴールド)は、史上最高値水準で推移しています。それに追随し、銀も記録的な高値水準で推移しています。ですがプラチナは急騰していません。このことはプラチナが固有の要因で急騰できなくなっていることを示しています。

プラチナが急騰できず、長期低迷を強いられている最も大きな理由は、2015年に発覚した「フォルクスワーゲン問題」をきっかけとし、多くの金融関係者や投資家の間でプラチナに関するまことしやかな悲観論が膨れ上がったことだと、筆者は見ています。

2015年9月、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン社が違法な装置を使って排ガス浄化装置のテストを不正にくぐり抜けていたことが明らかになりました。これにより、同社の主力車種であるディーゼル車を否定する動きが強まり、同車の排ガス浄化装置に使われるプラチナの需要が激減する、プラチナ価格が急落するなどといった、まことしやかな悲観論が膨れ上がりました。

問題発覚前までは、金(ゴールド)相場と一定の連動性を保ちながら大幅反発する場面もありましたが、問題発覚後はそれが全く見られなくなりました。このことは、まことしやかな悲観論が、プラチナ相場に悲劇をもたらしたことを意味します。

図:プラチナと金(ゴールド)の国際価格 単位:ドル/トロイオンス
図:プラチナと金(ゴールド)の国際価格 単位:ドル/トロイオンス
出所:LBMAのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。