[Vol.1740] ESG推進下でプラチナ需要はむしろ増加

著者:吉田 哲
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原油反落。OPECプラスの自主減産縮小方針などで。73.58ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,369.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,960元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年07月限は574.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1344.4ドル(前日比0.75ドル縮小)、円建てで6,708円(前日比183円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月4日 13時45分時点 6番限)
11,834円/g
白金 5,126円/g
ゴム 332.3円/kg
とうもろこし 40,510円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「ESG推進下でプラチナ需要はむしろ増加」
前回は、「フォルクスワーゲン問題の呪いは継続中」として、プラチナと金(ゴールド)の国際価格について述べました。

今回は、「ESG推進下でプラチナ需要はむしろ増加」として、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移について述べます。

以下はフォルクスワーゲン問題が発覚した際に、非難の的となった自動車排ガス浄化装置向け需要の推移です。確かに同問題発覚後、西欧での同需要は減少しましたが、急減はしませんでした。

問題発覚とは別の要因(コロナショック)により一時的に減少幅が拡大した時期がありましたが、現在は北米、中国、インドなどでの増加が目立ち、2024年は問題が発覚した2015年を上回る見通しが出ています。プラチナはほとんど、フォルクスワーゲン問題の呪いから解き放たれた状態にあるといえます。

増加の背景については、電気自動車の影響が及びにくい大型車(トラックやバス)の排ガス浄化装置向け需要が増えていること、北米や欧州の一部でハイブリッド車への回帰が起きていること、世界各国で排ガス規制が年々強化され、自動車一台当たりに使われる排ガス浄化装置向けの需要が増えたこと(浄化装置の機能向上を背景とした需要増加)などが考えられます。

また、長期視点で見れば、日本と欧州各国が連携してルール作りを行っている水素社会にプラチナが大きく貢献する可能性があります。水の電気分解の原理を利用した水素の生成装置では、使用する電気が再生可能エネルギー由来であれば、そこで生成される水素は「グリーン水素」と呼ばれます。グリーン水素は環境に最も優しい水素です。

水素は生成過程を明確にする目的で色分けされています(水素自体は無色)。グリーン水素のほか、化石燃料を原料として生成した際に発生する二酸化炭素を回収した水素はブルー水素、回収せずに大気中に放出した水素はグレー水素と呼ばれます。

グリーン水素のうち、使用する電力が太陽光発電によって得られたものであればイエロー水素、原子力発電によって得られたものであればピンク水素と呼ばれます。また、グレー水素のうち石炭由来であればブラック水素などと呼ばれることもあります。

プラチナ需要は、短期的に自動車排ガス浄化装置向けが増加傾向にあり、かつ長期的には新しい分野で増加する可能性があります。この10年弱の間、プラチナ相場は長期低迷を強いられてきましたが、こうした需要回復ムードを機に、まさに今、長期視点の反発に向かおうとしているように見えます。

図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移 単位:千オンス
図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移 単位:千オンス
出所:World Platinum Investment Councilのデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。