[Vol.1799] 「恐怖の素」を抱えて人気銘柄を買う投資家

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。直近の価格上昇分の調整などで。74.92ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,542.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は16,755元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年10月限は559.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1593.45ドル(前日比3.35ドル拡大)、円建てで7,292円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月28日 17時23分時点 6番限)
11,695円/g
白金 4,403円/g
ゴム 370.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,020.0円/mmBtu(24年11月限 24年8月23日17時29分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『恐怖の素』を抱えて人気銘柄を買う投資家」
前回は、「『暴騰中・歴史的高値』は興奮と恐怖の源泉」として、主要株価指数と金(ゴールド)の価格推移(月足)(2009年2月を100として指数化)を確認しました。

今回は、「『恐怖の素』を抱えて人気銘柄を買う投資家」として、歴史的高値圏で推移する金(ゴールド)相場への印象と長期低迷銘柄の対比を確認します。

強い恐怖に駆られたくない、つまり不意のリスクを回避したい場合、(前回例示した)ジェットコースターや観覧車に乗らない、歴史的高値圏で推移する銘柄を買わない、という選択をすることになりそうですが、基本的に人は「高所」を求める生き物であるため、乗ってしまう、買ってしまう、ことは往々にして起き得ます。

不意のリスクを回避する策については、ジェットコースターや観覧車のトラブルよりも、歴史的高値で推移する銘柄の急落の方が、多いと考えられます。遊園地のアトラクションは、乗るか乗らないか、の二択である一方、歴史的高値圏で推移する銘柄を保有していたとしても、同時に別の銘柄を保有することが可能だからです。

以下は人気の株価指数と同様、歴史的高値圏で推移する金(ゴールド)について、個人投資家の皆さまが抱いている印象です(資料の左側)。

2023年10月30日から11月1日にかけて実施した個人投資家アンケート「楽天DI」において、金(ゴールド)に関わるエピソードを自由記入(128文字まで)で入力いただいた内容のうち、歴史的高値圏で推移していることが原因で購入することをためらっている気持ちがにじみ出ている回答をまとめたものです。

歴史的高値圏で推移していることによって、これから投資を始めてもうま味が得られないかもしれない、今後は安くなるかもしれない、相場予想は難しいなどの、懸念を感じておられることが浮かび上がってきました。

これらの質問・回答の前提は金(ゴールド)ではありますが、個人投資家の方々が抱く歴史的高値圏で推移している銘柄への印象という点で、人気の株価指数への印象にも通じると考えます。

これだけの潜在的な懸念(恐怖の素)を抱えながら、歴史的高値圏で推移する大人気銘柄を保有する人がたくさんおられるのは、「みんなが買っている」「米国株は大丈夫」という集団心理が、歴史的高値圏で推移していることへの認識を曇らせているためだと、考えられます。

一方、資料の右側に示した、歴史的高値圏と正反対に位置する「長期低迷銘柄」であれば、これらの懸念は生じにくいと言えます。これから投資を始めてうま味を享受できる、今後は高くなる、相場予想はそんなに難しいものではない、などが想定されるためです。

投資に100%の安心は存在しませんが、少なくとも潜在的な懸念(恐怖の素)が存在する歴史的高値圏で推移している銘柄に比べれば、安心感は大きいと言えるのではないでしょうか。「長期低迷銘柄」をポートフォリオの一部に据えることは、強い恐怖に駆られないようにするための、シンプルで有効な策であると、筆者は考えています。

図:歴史的高値圏で推移する金(ゴールド)相場への印象と長期低迷銘柄の対比
図:歴史的高値圏で推移する金(ゴールド)相場への印象と長期低迷銘柄の対比
出所:投資家アンケート「楽天DI」のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。