[Vol.1843] 米国の自由民主主義指数は回復せず

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.21ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,763.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年01月限は17,785元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年12月限は532.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1762.75ドル(前日比13.05ドル拡大)、円建てで8,704円(前日比31円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月1日 17時25分時点 6番限)
13,569円/g
白金 4,865円/g
ゴム 350.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,978円/mmBtu(25年2月限 11月01日16時48分時点)

●NY原油先物(期近) 月足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「米国の自由民主主義指数は回復せず」
前回は、「トラでもハリでも、金・原油は高止まりか」として、新しい米大統領がもたらす可能性があるコモディティ銘柄への影響(筆者イメージ)を確認しました。

今回は、「米国の自由民主主義指数は回復せず」として、米国の自由民主主義指数(1963年~2023年)を確認します。

トランプ氏、ハリス氏が新しい米大統領になった時に想定される、コモディティ(国際商品)相場への影響を考えます。

V-Dem研究所(スウェーデン)は、世界各国の民主主義に関わる情報を数値化して多数の指数を公表しています。自由民主主義指数もその一つです。この指数は0と1の間で決定し、0に接近すればするほど、その国が自由で民主的な度合いが低いことを、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを意味します。

以下のグラフは、米国の同指数の推移です。東西冷戦のさなか、米国は自由で民主的な姿勢を強めていきました。旧ソ連や旧ソ連と考え方を同じくする国と明確な差が生じる中で、同指数は目立った上昇を演じました。2001年に同時多発テロ発生をきっかけとした混乱によって、一時的に反落したものの、その後は反発して0.85近辺という高い水準を維持しました。

しかし、米大統領選挙でトランプ氏が勝利した2016年を境に急低下しました。彼の勝利は、民主主義の対局にある分断を利用したものだったといわれています。同指数の推移は、彼の横暴ぶりが米国の民主主義を大きく傷つけたことを、如実に示しています。

その後、民主主義を取り戻すことを前面に打ち出し、2020年にバイデン氏が大統領選挙で勝利しました。これを期に、同指数は元の高水準に戻ることが期待されましたが、いまなお回復途上にあります。

ハリス氏は、トランプ氏を「米国の民主主義を毀損した」と批判しています。たしかに彼はその批判を受け入れなければならないでしょう。ただし同時に彼女は、現政権で米国の民主主義を十分に回復させることができていないことを受け入れる必要があるでしょう。

現政権下で米国の民主主義が回復途上だったことを考えれば、今回の大統領選挙で現政権の考え方を引き継ぐハリス氏が勝利したとしても、十分な回復が望めない可能性があります。

米国の民主主義の低迷は、世界全体の問題でもあります。民主主義を正義とする西側の超大国である米国の民主主義の低迷は、2010年ごろから続く、世界全体の民主主義の低下を加速させる可能性があります。引いてはそれが、戦争を拡大させたり、非西側の資源の出し渋りを拡大させたりするおそれがあります。

ハリス氏に対して「トランプ氏よりクリーン」という印象を抱く有権者は多いかもしれませんが、彼女が勝利しても、長期視点の世界規模の混乱が続く可能性がある点に、留意が必要です。

やがて投開票日が到来し、いずれ結果は出ます。どちらが新しい大統領になろうとも、長期視点で相場と向き合い続けることが大切です。長い米国の歴史の一場面に立ち会っている、という気概で注視していきたいと思います。

図:米国の自由民主主義指数(1963年~2023年)
図:米国の自由民主主義指数(1963年~2023年)
出所:V-Dem研究所のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。