トリプルレッドを受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 これまで、金とビットコインは、ドルなどの既存通貨に対する代替資産として、値動きの相関が高まる時期と、代替資産同士の中での資金シフトで逆相関の動きとなるケースがあったが、足元は米大統領選挙や議会選挙の結果を受けて、ビットコインに金から資金が流れている格好だ。

 米国で2024年1月にビットコインの現物に連動する上場投資信託(ETF)取引が始まった。過去、金相場も米国に金ETFが上場して以降、投信の形になったことで、規制等の理由で金投資に参加できなかった年金などの機関投資家の多くが参入できるようになり、金価格水準を大きく引き上げた一因となった。ビットコインも10月には米フロリダ州のジミー・パトロニス財務担当責任者が、ビットコインの州年金基金への組み入れを州の行政委員会に求める書簡を送付している。7月には共和党のシンシア・ルミス上院議員が米連邦準備銀行に戦略的準備金としてビットコイン保有を義務づける法案を上院に提出している。

 過去、ビットコイン価格が、NY金価格(1㎏当たり)を上回ると、価格転換ポイントとなった。足元でも、ビットコイン価格が金価格を上回ってきたが、過去の経験則通り、価格逆転場面が、ビットコインの売り場、金の買い場となるのか否か、見極めが必要な状況だ。

 ドルの代替は金ではなくビットコインと言う見方が全世界で一般化すれば、1㎏当たりの金価格がビットコインの下値支持に変化する可能性はあるものの、トランプ政権がスタートしていない現段階で、そのシナリオは時期尚早と考える。

 証券化した商品(金価格)ではなく、実物としての金へのニーズも大きい。過去の経験則通り、トランプトレードで急速に走り過ぎたポジションの巻き戻しには注意したい。

ドル建て金とビットコイン
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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