[Vol.1907] 「終末時計」も金(ゴールド)高を示唆

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.27ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,889.71ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,500元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年03月限は603.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1859.76ドル(前日比5.36ドル拡大)、円建てで9,312円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月7日 17時43分時点 6番限)
14,054円/g
白金 4,742円/g
ゴム 373.8円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,960円/mmBtu(25年4月限 12月19日17時25分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『終末時計』も金(ゴールド)高を示唆」
前回は、「中央銀行の金(ゴールド)保有量は増加へ」として、2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景を確認しました。

今回は、「『終末時計』も金(ゴールド)高を示唆」として、「人類滅亡」までの残り時間(公表年のみ記載)を確認します。

1945年にマンハッタン計画(第2次大戦中の米国の原爆開発・製造計画)に貢献したシカゴ大学の科学者によって作られた米国の科学雑誌「Bulletin of the Atomic Scientists」は、1947年より「人類滅亡の日」までの残り時間を示唆する「終末時計」を公表しています。

2025年1月に公表された最も新しい「終末時計」は、「人類滅亡の日」の午前0時00分まで残り89秒、今が「前日の23時58分31秒」で、最も人類滅亡の日に近いことを示唆しました。この時計は、核のリスク、気候変動、生物学的脅威、AIなどの強大な技術による大惨事に対する世界の脆弱(ぜいじゃく)性を考慮しているとされています。

筆者が注目した点は、トランプ氏の一回目の米大統領選の勝利(2016年)以降、一貫して人類滅亡までの時間が短くなっていることです。もちろん、トランプ氏だけが、終末時計が動く要因ではありません。

しかし、世界の超大国である米国の大統領であること、そして米国第一主義を掲げ、それに対抗する姿勢を示す国に不安(恐怖と言ってもよい)を与える「有事製造機」に例えられる以上、終末時計にも影響を与えている可能性を否定することはできません。

「終末時計」は、以前の[Vol.1905] 世界分裂が加速して高インフレ長期化へ、で触れた米国の自由民主主義指数と同様、トランプ氏がもたらす超長期視点の影響を映し、金(ゴールド)市場の超長期視点のテーマである「見えないリスク」の高まり具合を示していると、言えます。

この数回で確認したとおり、トランプ氏は、短中期、中長期、超長期の時間軸で、異なる有事を同時にもたらす存在です。しばしば、株高やドル高など、金(ゴールド)の下落圧力を生み出すこともあるものの、基本的には「有事製造機」として、金(ゴールド)相場に上昇圧力をかけ続けると、言えそうです。

足元、とかく関税引き上げの件で不安を振りまいていると言われていますが、それは短期視点の不安に過ぎず、それよりももっと時間軸が長い不安(有事)の製造・提供が始まっていることに、留意が必要です。金(ゴールド)相場は長期視点で大変に高い水準にありますが、それでもなお、上昇し得ると筆者は考えています。

図:「人類滅亡」までの残り時間(公表年のみ記載) 単位:分
図:「人類滅亡」までの残り時間(公表年のみ記載) 単位:分
出所:Bulletin of the Atomic Scientistsのデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。