NY金、もち合い上放れなら上げ加速へ

著者:菊川 弘之
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 既に発表されている世界全体の経済対策費だけでもIMF試算で8兆ドルと世界経済のGDPの10%弱に相当する前代未聞の規模だが、よほど景気が良くなるのを確認できなければ、金融引き締めへの移行などできない。

 11月の米大統領選挙のみならず、2022年まで米国で利上げがないとすると、少なくとも今後1年前後の金の売買戦略は、大きな下値の心配なく、安値が出たとしても、そこは追撃売りではなく、押し目買い戦術が有効ということだ。

 コロナショックで、政府と中央銀行が歩調を合わせて財政ファイナンス色の強い「金融・財政政策の総動員」が採られたが、一度大きく緩んだタガを再び引き締めるのは難しい。世界を救ったと言われたリーマンショック時の中国による4兆元(約52兆円)に上る大規模経済対策を大きく上回る政策総動員による金余りは、新たな巨大株バブルを生みそうだが、長期的には波乱の芽(巨額財政赤字拡大に伴う通貨不安)が、より大きくなって後ずれしたに過ぎない。

 しばらく先になりそうだが、金融緩和再燃バブルの後には、パンデミック対策で国家財政が悪化する中、保有資産の評価損問題などから中央銀行の信用力低下が材料視される時代が到来する。米政府の債務残高の名目GDP比は、第二次世界大戦時を上回るという予測も出始めている。行きつく先は、現段階では想像しがたい金利上昇とインフレ。その時に金(と暗号資産)は、値位置を変えて本格的に輝きを増すだろう。パウエルFRB議長が17日の下院委員会で、これまで慎重姿勢だった「デジタルドル研究」を、一転して進めるとしたのも、基軸通貨ドルに対する将来的な不安感が根底にあるのだろう。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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