混迷深まる中でのリスクオン相場に注意

著者:菊川 弘之
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 バイデン氏の獲得選挙人は現時点で253人。大統領選挙に王手をかけた格好だが、再集計や法廷闘争の結果次第で、最終結果は依然として不透明だ。

 世論を見ながら、トランプ大統領が自ら降りる格好で「敗北宣言」を出せば別だが、現段階では、最後まで戦う姿勢を見せており、バイデン候補が過半数を取った場合でも、トランプ陣営は認めず、2000年同様、法廷闘争からの長期化に入る可能性が高まっている。この場合、選挙人確定日の12月8日までに、いずれかの敗北宣言が出るのか否かが焦点となる。

 足元のマーケットは、コロナショック以降の過去にない規模の過剰流動性相場で、「トランプ優勢でも買い、バイデン優勢でも買い、大統領選挙混迷でも買い、トリプルブルーでも買い、議会とのねじれが生じても買い、何でも良いとこどり、ご都合の良い後付けで」リスクオン相場を続けているが、12月11日には暫定予算期限が訪れ、大統領選挙の決着がつかない間は、米追加経済対策もまとまらないだろう。12月8日までに、何らかの決着がつかないと、これまでの「リスクオン」が急速に巻き戻される可能性には注意したい。

 また、いずれが大統領になっても、「議会とのねじれ」が生じる見通しで、分断が続く中、次なる4年間の政権運営は難航すると見られる。

 NY金相場は、1900ドルを挟んだ保合いが継続しているが、選挙を巡り、米国各地での暴動などが起き、非常事態宣言が発せられるような事態となれば、金の上値リスクは高まるだろう。5日には長大陽線で10日間・20日間高値を更新し、8月高値を起点とした下降トレンドも上抜いてきた。一目均衡表の雲と重なる心理的節目2000ドルを超えてくると、テクニカル的な強気感は増すチャート形状だ。

 一方、12月8日までに早々に決着が付くなら、まずは新政権誕生を祝う動きが出た後、追加経済対策の規模と実施時期、次期財務長官人事などに、市場の関心は移行するだろう。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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