[Vol.992] 穀物相場でパラダイムシフト発生!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。65.56ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,831.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は14,290元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年06月限は425.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで590ドル(前日比4.9ドル縮小)、円建てで2,074円(前日比12円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月12日 17時28分頃 先限)
6,409円/g 白金 4,335円/g
ゴム 255.4円/kg とうもろこし 37,250円/t

●シカゴトウモロコシ先物(期近 月足)  単位:ドル/ブッシェル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「穀物相場でパラダイムシフト発生!?」

前回は、「穀物に新需要出現!?」として、長期的視点で、穀物に新しい需要が生まれる可能性について書きました。

今回は、「穀物相場でパラダイムシフト発生!?」として、長期的視点で、穀物に新しい需要が生まれる可能性について書きます。

前回、世界規模の「環境配慮」ブームの中、今後、家畜由来のメタンの排出低減の必要性が高まれば、代替肉の需要は各段に増加する可能性があり、この時、大豆やトウモロコシを中心とした穀物需要の構造が、根底から変わる可能性があると、書きました。

こうした、需要構造の根底からの変化は、以下のグラフに示した「長期的な水準切り上げ」に貢献する材料と言えます。

天候や輸出税などの生産国側の要因も、消費国側の要因も、数年や数十年単位の地殻変動のような根底からの水準切り上げ(パラダイムシフト)の要因になったことはありません。

現状を考えれば、現在の穀物相場の上昇は、生産国と消費国それぞれがきっかけとなった「散発的な価格上昇」と新しい需要が発生する期待がもたらす「長期的な水準切り上げ」が同時に起きていることによって、発生していると、筆者は考えています。

天候だけ、消費だけ、ではなく、長期的な視点に立ち、新しい需要が発生する可能性を含めて、材料を俯瞰してはじめて、現在の穀物や植物油相場の急騰劇を説明できると思います。

目先、短期的には、主要産地の米国が天候シーズンに入っているため、寒波などの影響で、さらに上値を伸ばす、それにつられて食用油の価格も上値を伸ばす可能性があると、考えています。

長期的には、バイオ燃料、バイオプラスチック、代替肉など、環境配慮や新しい食文化が本格的に浸透する期待が膨らみ、「長期的な底値切り上げ」つまり、パラダイムシフトが起きる可能性があると、現時点では、考えています。

図:シカゴトウモロコシ先物(期近 月足 終値) 単位:セント/ブッシェル


出所:ブルームバーグより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。