[Vol.1604] 戦争短期終結がショック回避に効くが…

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。76.02ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,960.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年01月限は14,355元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年12月限は596.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1098.65ドル(前日比8.35ドル縮小)、円建てで5,362円(前日比5円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月10日 16時30分時点 6番限)
9,513円/g
白金 4,151円/g
ゴム 265.3円/kg
とうもろこし 39,220円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「戦争短期終結がショック回避に効くが…」
前回は、「中東地域の食料不安が顕在化」として、中東地域で食料不安に陥っている人の数とシェア(2022年)、確認しました。

今回は、「戦争短期終結がショック回避に効くが…」として、国連安全保障理事会決議結果(2023年10月)を確認します。

第三次中東戦争は「六日戦争」と呼ばれています。1967年6月5日に勃発し、国連決議によって戦闘が停止する同10日までの6日間がその期間だったためです。

陸と空でエジプト、ヨルダン、シリアといったアラブ側を圧倒したイスラエルは、ガザ地区、ヨルダン川西岸、シナイ半島、ゴラン高原を含んだパレスチナ地域の広い範囲だけでなく、エジプトやヨルダンの一部を占領しました。

短期間で戦争が終了した理由に、国連安全保障理事会(安保理)が迅速に停戦を呼び掛けたことのほか、イスラエルの軍事力がアラブ側をはるかに上回っていたことが挙げられます。これらは、戦争を短期で終わらせるために欠かせない要素です。

足元、国連は機能不全に陥っています。以下の通り、10月7日の戦争勃発以降、安保理で四回採決が行われましたが(10月16日のロシア案、18日のブラジル案、25日の米国案、25日のロシア案)、全て否決されました。

いずれも一時休戦・早期の人道支援などが盛り込まれた案でしたが、ハマスを否定していない、イスラエルの自衛権が明記されていない、など、さまざまな理由により、常任理事国の考えが一致しませんでした。

10月27日に行われた国連総会で、ガザ地区を実効支配するハマスを否定する文言を加えたカナダの案が反対55となり否決されましたが、このことでハマスを否定しない国が多いこと(全体の四分の一強)が浮き彫りになりました(同文言を外した案(ヨルダンなど40カ国が提案)は賛成120で採択されたものの、法的効力はない)。

短期終結を主導するはずの国連が機能不全に陥っているため、この戦争が長期化する可能性が高くなりつつあります。本レポートで述べたとおり、この戦争はエネルギーだけでなく、食料の価格動向をも左右し得る点に留意が必要です。「[Vol.1602] 『二重ショック』で食料価格高も」で述べた「二重ショック」に気を付けつつ、状況を見守らなければなりません。

図:国連安全保障理事会決議結果(2023年10月)
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:国際連合の資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。