[Vol.1654] 2024年も原油相場は長期視点の高止まりか

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。76.72ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,018.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,665元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年03月限は588.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1118ドル(前日比5.30ドル縮小)、円建てで5,320円(前日比9円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月26日 17時54分時点 6番限)
9,610円/g
白金 4,290円/g
ゴム 283.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「2024年も原油相場は長期視点の高止まりか」
前回は、「向こう側(産油国)の心理状態を考える」として、消費国の向こう側にいる産油国の考えについて述べました。

今回は、「2024年も原油相場は長期視点の高止まりか」として、原油市場において2023年に目立った動向と2024年の予想について述べます。

産油国側の思惑をも考慮した中立的な分析のためには、テーマごとに材料を抽出する必要があります。短中期的に注目すべきテーマは、「産油国の動向」と「需要動向」です。「気候変動」や「省エネ技術」については、より時間軸が長い期間の分析で用います。

2024年の動向を考える際は、「産油国の動向」と「需要動向」に関わる材料に絞ることがよいと考えます。

「産油国の動向」:中東地域からの供給減少懸念(実際に減少するかは別)や西側・非西側の分断を遠因としたOPECプラスの減産、脱炭素推進によって発生している米国の供給鈍化などが目立つ可能性があると考えています。いずれも原油相場を押し上げ得る材料です。

「需要動向」:米国で金融政策が緩和的になることで景気回復・需要回復が目立つ可能性があることは原油相場を押し上げ得る材料です。一方、中国の景気減速懸念が根強く、同国の原油消費量の伸びが鈍化する可能性があります。この点は下落材料です。

2024年は、このような複数の材料が入り混じりながら、価格が推移すると考えられます。需要面だけに注目して分析をすることはできません。

こうした分析により、筆者は2024年の原油相場は60ドルから最大120ドルの間で推移すると考えます(2024年1月26日時点)。

以前の「[Vol.1650] なぜ災害時にニセ情報が増えるのか?」で述べた「共感しやすい情報」にあおられずに、疑いの目を向けて接することは、災害発生時だけでなく、ネット社会で生きるための最低限の作法であると筆者は考えています。「共感しやすい情報」だからといって、安易に飛びつかないこと、むやみに拡散しないこと、悪用しないことは大変重要です。

ネット上の情報収集にあっては、目に見えない要素が多いからこそ、対面でのコミュニケーションのときに比べて何倍も、あおられず、疑う心を忘れてはならないと思います。このことは、投資情報を収集する際の作法でもあると思います。

図:2023年に目立った動向と2024年の予想
図:2023年に目立った動向と2024年の予想

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。