金相場、6月安アノマリーは、買い仕込みの好機

著者:菊川 弘之
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 バイデン・トランプどちらが大統領になっても、米国内の分断による政治的な紛争が予想され、連邦政府から19の州が離脱し、政府軍との内戦勃発が描かれた全米一位の興行成績(日本公開は10月)の映画「CIVIL WAR」が現実化しないとは言い切れない状況だ。既に米国政治は「デモクラシー(民衆支配)」ではなく、「プルトクラシー(金権支配)」となっており、トップ0.1%の超富裕者層が実質国民所得の20%、トップ1%の富裕者層が39%を占有する超格差社会となっている。米国の分断は深刻であり、内戦に発展しつつある状況を認識した方が良いだろう。歴史上、数々の帝国が栄枯盛衰を繰り返してきたが、値異国もその例外ではない。

 更に、米国や日本、ユーロ圏と、世界の3大基軸通貨全てで債務が過剰な状態にあり、債務増加が通貨全般の価値低下につながっている。財政赤字や国債増発は、先進各国に共通、世界のほとんどの中央銀行にいえることだ。

 S&Pグローバル・レーティングは5月31日、フランス国債の格付けを「AA」から「AA-」に引き下げた。予想以上の財政赤字が債務を押し上げるとの見通しが格下げの理由と説明した。

 デイビッド・マルパス氏(元世界銀行総裁)は、「米国政府は高額の公的債務を抱えながら過剰な支出を行うために、早ければ2025年にも財政破綻しうる」と警告している。同様にラリー・フィンク氏(ブラックロックCEO)も、「膨れ上がる米国の債務に多くの指導者が注意を払うべき」と、株主・投資家への手紙の中で指摘している。

 仮に、トランプ氏が大統領に選ばれれば、米国は保護主義に傾き、関税を大幅に引き上げ、インフレにつながり、バイデン大統領が再選されても財政拡張が続く。どちらが大統領になっても、米国は財政赤字が大幅に拡大し、金にとっての強気要因となるだろう。

米政府債務対GDP比と金年間平均価格

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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