[Vol.1911] トランプ氏もチョコレート高の一因か

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.56ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反発などで。2,960.11ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,935元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年03月限は595.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1906.56ドル(前日比4.36ドル拡大)、円建てで9,647円(前日比20円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月14日 17時46分時点 6番限)
14,426円/g
白金 4,779円/g
ゴム 375.8円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,355円/mmBtu(25年4月限 2月13日17時22分時点)

●カカオ豆先物(CFD) 月足  単位:ドル/トン
カカオ豆先物(CFD) 月足  単位:ドル/トン
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「トランプ氏もチョコレート高の一因か」
前回は、「主要生産国に生産量減少懸念あり」として、カカオ豆の主要生産国における生産量を確認しました。

今回は、「トランプ氏もチョコレート高の一因か」として、食品における嗜好品の主要生産国と自由民主主義指数(2023年)を確認します。

V-Dem研究所(スウェーデン)は、法整備、裁判制度、言論の自由など、民主主義に関わる多数の情報を基に「自由民主主義指数」を公表しています。この指数は0と1の間で決定し、0に接近すればするほど、その国が自由で民主的な度合いが低いことを、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを意味します。

以下の図は、カカオ豆、コーヒー豆(アラビカ種とロブスタ種の合計)、砂糖(サトウキビ由来とテンサイ由来の合計)、オレンジの生産国上位10カ国(2023年)の、自由民主主義指数(2023年)を示しています。

10カ国平均で、カカオ豆は0.44、コーヒー豆は0.34、砂糖は0.38、オレンジは0.35と、いずれも中心の0.5を下回る低水準です。同指数が比較的高い、米国やブラジル、オーストラリアといった特定の国を除外すればさらに低くなります。

同指数が低い国では、法の支配や独立した司法が維持されなくなる、国家間の対外的な枠組みにおけるルールが順守されなくなる、などの動きが目立ち始め、ゆくゆくは自国の利益を第一にする考え方が支配的になる可能性があります。

資源を持っている国が自国優先の姿勢を強めると、資源を出し渋る懸念が大きくなります。出し渋りは、世界全体の需給ひっ迫懸念を強めます。

また、トランプ政権2期目が始まり、米国の同指数が1期目と同様、急低下する可能性が高まっています。西側の超大国である米国の民主主義の行き詰まりは、2010年ごろから続く世界全体の民主主義の行き詰まり、ひいては世界分裂を加速させる可能性があります。

その結果、カカオ豆などの主要生産国の自由度・民主度の低下に拍車がかかり、いまにも増して、カカオ豆などの供給減少懸念が強まる可能性があります。

資源国の出し渋りだけでなく、主要生産国の天候、生産量、単収、トランプ氏の動向のほか、「[Vol.1909] 短期急騰要因と長期底上げ要因が同時進行中」の「図:食品における嗜好品に関わる国際商品の価格を押し上げている材料」で触れた投機資金、ESG、異常気象などについても、注目する必要があります。

この数回で、今年のバレンタインデーを前に、チョコレートの原材料の一つであるカカオ豆などの価格高騰の背景について、確認しました。短期・長期、複数の価格上昇要因が存在する状況は、まだ当面続くと、筆者は考えています。

図:食品における嗜好品の主要生産国と自由民主主義指数(2023年)
図:食品における嗜好品の主要生産国と自由民主主義指数(2023年)
出所:V-Dem研究所およびFAO(国連食糧農業機関)のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。