[Vol.2075] 有事(伝統的)と有事(非伝統的)の違い

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。58.71ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,245.21ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年01月限は14,900元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年12月限は445.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2548.96ドル(前日比35.26ドル拡大)、円建てで13,152円(前日比91円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月16日 17時57分時点 6番限)
21,127円/g
白金 7,975円/g
ゴム 307.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「有事(伝統的)と有事(非伝統的)の違い」
前回は、「『土台』の上で起きている歴史的な高騰」として、ドル建て金(ゴールド)価格の推移イメージを、確認しました。

今回は、「有事(伝統的)と有事(非伝統的)の違い」として、有事(伝統的)と有事(非伝統的)の例を、確認します。

前回、短中期に分類した「有事(伝統的)」と、超長期に分類した「有事(非伝統的)」の違いを確認します。金融機関や一部の投資家の間でまことしやかに語られている有事がここで言う「有事(伝統的)」です。

1970年代後半に、中東地域で複数の有事が発生し、金(ゴールド)相場が短期的な急騰劇を演じました。この時の経験則が現在の「有事(伝統的)」の原型です。

物理的な衝突を伴う戦争やテロのほか、大規模な自然災害、大規模な金融危機、パンデミックなど、見えやすく、分かりやすく、感じやすいことが特徴です。

近年の具体例に、中東やウクライナ情勢の不安定化、トランプ関税への不安の高まり、実感を伴わない株価急騰、などが挙げられます。こうした「有事(伝統的)」は、「代替資産」「代替通貨」とともに、金(ゴールド)市場に対して短中期視点の上下の圧力を提供します。

一方、「有事(非伝統的)」は、新しい技術がもたらす脅威、社会の変革がもたらす不安、新しい考え方がもたらす混乱、世界分断がもたらす混沌(こんとん)などを指し、目に見えにくい、分かりにくい、感じにくい、などの特徴があります。

近年の具体例に、自由民主主義指数の低下が示す世界の民主主義の後退、中国の米国債保有高の減少が示唆する新興国の米国離れ、米ドルの総量の急増がきっかけで起きつつあるドル覇権崩壊懸念、などが挙げられます。

こうした「有事(非伝統的)」は、中長期のテーマの一つ「中央銀行」と強く結びつき、金(ゴールド)市場の長期視点の高騰劇を支える「土台」の一翼を担っています。

中央銀行全体の買い越し(購入-売却)量がプラスに転じたタイミングが2010年でした。この2010年ごろは、自由民主主義指数が低下し始めたタイミング、そして中国の米国債保有高の減少が始まったタイミングと、ほとんど一致します。

図:有事(伝統的)と有事(非伝統的)の例
図:有事(伝統的)と有事(非伝統的)の例
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。