[Vol.1322] プラチナの「新しい常識」は「脱炭素」が主導

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。85.31ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,672.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は13,015元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年11月限は664.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで772.4ドル(前日比3.1ドル縮小)、円建てで3,691円(前日比112円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月16日 13時40分頃 6番限)
7,642円/g
白金 3,951円/g
ゴム 224.1円/kg
とうもろこし 50,170円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナの『新しい常識』は『脱炭素』が主導」

前回は、「プラチナ『今安く・今後高くなる可能性がある』」として、プラチナの長期視点の価格推移を、確認しました。

今回は、「プラチナの『新しい常識』は『脱炭素』が主導」として、筆者が考えるプラチナの新しい常識を、確認します。

環境配慮の動きは「脱炭素」が旗印となり、世界を席巻しています。長期的視点で、「脱炭素」はプラチナの需要を増加させる要因になると、考えられます。

環境配慮先進国である欧州主要国、そして日本は、乗り物や発電所のタービンを動かしたり、熱を発生させたりするために使用するエネルギーを、CO2(二酸化炭素)を排出する化石燃料から「水素」に切り替える方針を示しています(「水素社会」を目指す)。

プラチナは、水の電気分解の仕組みを利用した「水素の精製装置」や、水の電気分解の逆の仕組みを利用した「FCV(燃料電池車)の発電装置」に利用されるケースがあります。水素の精製装置で用いる電気が再生可能エネルギー由来だった場合、そこで発生した水素は「グリーン水素」と呼ばれます。

水素は無色透明ですが、どのような過程を経て精製されたかを示すため、便宜的に名前に色が冠されます。グリーンは精製過程でCO2を排出しなかった水素、ブルーは排出したがそのCO2を回収した水素、グレーは排出し、そのCO2を大気中に放出した水素です。

プラチナが装置の電極部分に用いられて精製される水素は、「グリーン水素」という、最も環境にやさしい水素です。また、FCVは走行時にCO2を排出しない(水を排出する)次世代自動車として、EV(電気自動車)などと同じように注目されています。

「脱炭素」の潮流は、長期視点でプラチナの需要を喚起し、プラチナ相場の変動領域を、一段引き上げる可能性があります。

・プラチナ積立は資産と人間性を成熟させる!?

[Vol.1319] 結婚記念を特定年数で祝う文化はどう拡大した?」で述べたとおり、結婚して数年間は、紙、綿、木などまだまだ未熟な「薄い」素材が象徴でした。10年くらいたつと、鉄、銅、錫(スズ)、鋼鉄など「硬い」素材に、15年くらいで、絹、象牙、水晶など「価値がある」な素材へと移り変わります。

さらに時を経ると、シルバー、ゴールド、プラチナといった貴金属や、真珠、ルビー、サファイアといった宝石などの「希少で高価」な素材になります。「薄い」→「硬い」→「価値がある」→「希少で高価」、という移り変わりは、夫婦の関係が成熟する過程をなぞっていると言えるでしょう。

[Vol.1320] 『忍耐』と『プラチナ積立』に緊密な関係あり」で、プラチナとオークは、「忍耐」の要素を含むと書きましたが、これは単にプラチナとオークがそれぞれ「忍耐」を象徴する用途・意味があるだけでなく、成熟の果てにある「耐え忍ぶことの美しさ」の意味も含んでいると、筆者は考えています。

エリザベス2世が「プラチナ・ジュビリー」に達したその年に亡くなったことを思うと、英国王室の在位年数にしても、結婚年数にしても、「プラチナ(=70年)」の境地に到達するには相当の「忍耐」が必要であると、実感させられます。

[Vol.1320] 『忍耐』と『プラチナ積立』に緊密な関係あり」で述べた、(1)とにかく続けること、(2)余計なことをしないことにもとづき、エリザベス2世が示唆した「忍耐」の精神で愚直に積立投資を長期間続ければ、投資家として成熟し、ひいては人間的な成長を感じることができると、筆者は考えます。

こうした精神で積立を行う場合、「今安く・今後高くなる可能性がある」プラチナが、最も適していると、筆者は考えています。(プラチナの半分の「サンゴ(=35年)」などを目標に、開始してみてはいかがでしょうか)

図:プラチナの「新しい常識」
図:プラチナの「新しい常識」

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。