日経225先物、225ミニ、レバレッジETFそれぞれの使い分け~ 初心者のためのデリバティブ取引ことはじめ
日経平均株価を対象とした金融商品は日経225先物、日経225mini(ミニ)のほかに、「日経平均連動型のETF(Exchange Traded Funds)」と呼ばれるものがあります。ETFは1990年代に誕生した株式関連商品の一つです。直訳すると「上場投資信託」となりますが、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託のことを指します。証券総合口座を開設すれば、株式市場で個別株と同じように売買することができ、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、特定の指数の動きに連動する運用成果を目指しています。
例えば、ETFの代表である日経平均連動型ETFの運用は、主に日経225先物で行われているため、当然ながら日経225先物や日経225miniと同じような値動きをします。投資家の売買需給による影響や配当落ちによる下落などの影響もあり、正確には100%連動とまではいかないものの、ETFと株価指数先物は売買対象としての性質が類似していると言えるでしょう。
近年、個人投資家を中心に人気を集めているのが、日経平均株価の2倍の値動きとなる「日経平均連動型レバレッジETF」です。レバレッジ型は、日経平均株価やTOPIXなど原指数の日々の変動率に一定の倍数をかけた値動きになるよう設計され、大きな値動きが特徴です。仮に原指数が前日比で5%上昇すると、2倍のレバレッジ型ETFは10%程度上昇することになります。
上昇した場合、通常の日経平均連動型ETFに投資した場合よりも利益が大きくなり、少ない資金で大きなリターンが狙えますが、下落した場合は損失も大きくなるなど、リスクも高くなります。代表的な日経平均連動型レバレッジETFは、NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信 <1570> [東証E]、日経平均ブル2倍上場投信 <1579> [東証E]、ダイワ上場投信-日経平均レバレッジ・インデックス <1365> [東証E]などがあります。
日経平均連動型ETFとは逆に、原指数が下がると利益になるインバース型という商品もあります。先物取引で売りから入るのと同じ感覚です。レバレッジETFのように、変動率がマイナス2倍となるものはダブルインバース型ETFと呼ばれます。代表的な日経平均連動型ダブルインバースETFは、NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信 <1357> [東証E]、日経平均ベア2倍上場投信 <1360> [東証E]などがあります。
対象指標 | 名称 | 管理会社 |
---|---|---|
日経平均株価 | 大和アセットマネジメント | |
野村アセットマネジメント | ||
日興アセットマネジメント | ||
ブラックロック・ジャパン | ||
三菱UFJ国際投信 | ||
日興アセットマネジメント | ||
アセットマネジメントOne | ||
三井住友DSアセットマネジメント | ||
農林中金全共連アセットマネジメント | ||
大和アセットマネジメント | ||
日経平均レバレッジ | 野村アセットマネジメント | |
シンプレクス・アセット・マネジメント | ||
日興アセットマネジメント | ||
大和アセットマネジメント | ||
楽天投信投資顧問 | ||
日経平均インバース | 野村アセットマネジメント | |
シンプレクス・アセット・マネジメント | ||
大和アセットマネジメント | ||
日経平均ダブルインバース | 野村アセットマネジメント | |
シンプレクス・アセット・マネジメント | ||
大和アセットマネジメント | ||
楽天投信投資顧問 |
日経平均連動型ETFは、日経平均株価という原指数への連動を目指して運用されているため、日経225先物や日経225miniなどと似たような性質を持つ金融商品だと説明しました。では、これらの商品を上手く使い分けて運用するにはどうしたら良いでしょうか。
先物とETFの大きな違いは、レバレッジや証拠金、取引単位などです。日経225先物は取引をするのに最低でも証拠金が96万円程度(2020年5月29日時点の基準:SPAN証拠金額の掛け目1倍)必要ですが、日経225miniは10分の1となる9万6000円程度で済みます。ただ、これはあくまで最低証拠金なので、相場は思った方向と逆に動いて評価損が発生すれば、すぐに追加の証拠金を差し入れなければならず、さらに多くの資金が必要となる可能性があります。
一方、日経平均連動型(レバレッジ)ETFは現物ならば最低投資金額が2万円程度であり、損失が出ても追加の証拠金は必要ありません。証拠金が必要な信用取引だと6000円程度であり、資金力の小さい個人投資家にとって参入のハードルは低いと言えるでしょう。少しリスクを取って大きなリターンを狙いたいなら、原指数に対して値動きが大きい日経平均連動型レバレッジETFが有利と考えます。
ある程度資金がある方で大きなリスクが取れるのであれば、同じ金額で多くのポジションを持てる日経225先物や日経225miniが有利でしょう。資金の何倍の金額の取引をできるかを示すレバレッジは、日経平均連動型(レバレッジ)ETFが信用取引を使って3.3倍(レバレッジの場合、原指数に対して実質6.6倍)であるのに対して、日経225先物、日経225miniは22.9倍程度と高いことがわかります。
具体的には、資金が100万円あれば、日経平均連動型(レバレッジ)ETFは330万円のポジションを持つことができるのに対して、日経225先物、日経225miniは2290万円ものポジションを持つことが可能です。仮に日経平均連動型(レバレッジ)ETFで2290万円のポジションを持つには、信用取引でも700万円弱の資金が必要になります。
さらに日経225先物は「何円単位で価格が動くか」を指す呼値(よびね)が10円単位と日経225miniの5円単位に比べて大きく、値動きも大きくなる傾向があります。もっとも、リターンとリスクはトレードオフの関係にあり、リターンを追求するとリスクも高まります。
株価指数先物は、各限月の第2金曜の前営業日が最終売買日となるなど、決済期限があるのも特徴の一つです。そのため、短期間の値動きを予測して投資をする必要があります。ロール(期先物への乗り換え)をする場合でも、乗り換え時に売買手数料がかかります。日々の値洗いに伴う証拠金の差し入れに加え、きめ細かなロスカット、ポジション調整も必要になります。
しかし、ETFであれば個別株を売買するように運用でき、現物であれば決算期限もありません。そのため、一定期間ごとに、一定金額で、同じ投資対象を買い付ける「ドル・コスト平均法」で取得価格を平準化することも可能です。信用取引でも証拠金が少ないため、押し目買いや買い増しも機動的に行うことができます(ただし、制度信用取引の場合、6カ月後には決済期限となることにはご注意ください)。
日経225先物 | 日経225mini | 日経平均連動型 レバレッジETF |
|
---|---|---|---|
取引時間 | 8:45~15:15 16:30~6:00 |
8:45~15:15 16:30~6:00 |
9:00~11:30 12:30~15:00 |
取引最終日 | 各限月の第2金曜の前営業日 | 各限月の第2金曜の前営業日 | 無し(現物/一般信用) 6カ月(制度信用) |
取引単位
呼値の単位
|
1枚(取引価格の1000倍)
10円単位
|
1枚(取引価格の100倍)
5円単位
|
1口
10円単位
|
レバレッジ※ | 22.9倍 | 22.9倍 | 現物1倍(値動き含む2倍) 信用取引3.3倍(同6.6倍) |
証拠金※ | 96万円/1枚 | 9万6000円/1枚 | 約2万円(現物) 約6000円(信用取引) |
取引口座 | 先物・オプション口座 | 先物・オプション口座 | 証券総合口座 |
ETFを信用取引で空売りする場合、株不足が起きると「逆日歩」といういわゆる品貸料が発生することがあります。信用取引では通常、買い方が日歩(金利)を売り方に支払うのですが、株不足になってしまうと逆に買い方が売り方から逆日歩を受け取ることができます。
日経225先物と日経平均連動型ETFは基本的に連動するため、同じ金額の日経225先物を空売りし、日経平均連動型ETFの信用買いを同時に行えば、日経平均株価がいくら値上がり(値下がり)しても理論的には損益はゼロのままになります。
しかし、日経平均連動型ETFに逆日歩が5円発生した場合、仮に1000口投資していたとすると、1日あたり5000円ずつを受け取ることができます。多いときは逆日歩が50~70円まで上がることもありますので、そうすると1日で5~7万円にもなります。
理論的には値動きによるリスクがなく、サヤを取ることができるため、実際にこうした手法を行う機関投資家も多いようです。
みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。