株価指数オプションについて知ろう~ 初心者のためのデリバティブ取引ことはじめ
オプション取引とは、満期日(あらかじめ定められた期日)に、権利行使価格(あらかじめ定められた価格)で原資産(オプションの対象となる資産)を「買う権利」、「売る権利」を売買する取引です。
先物取引と同様に「デリバティブ」の一つであり、「日経225オプション」、「TOPIXオプション」、「長期国債先物オプション」、「有価証券オプション(かぶオプ)」、「商品先物オプション」、「通貨オプション」、「バイナリーオプション」など様々な原資産を対象とした商品があります。
「買う権利」のことを「コール・オプション」、「売る権利」のことを「プット・オプション」と言います。オプションの買い手は、売り手に「プレミアム」と呼ばれるオプション料を支払い、売り手はこのオプション料を受け取ります。オプションの買い手と売り手は満期日までに、転売するか、買い戻すことによって決済します。この時に最初に建玉を建てた時のプレミアムとの差額で損益が確定する「差金決済」となります。
例えばコール・オプションの買いは、原資産価格が今後上昇すると予想するときに使います。ここで具体的な例をみてみましょう。権利行使価格1万円のコール・オプションをプレミアム500円で買ったとします。この取引での損益は下の図のような青い実線で表され、損益分岐点は権利行使価格1万円+プレミアム500円=1万0500円となります。
思惑通り原資産価格が損益分岐点の1万0500円を超えてくると利益になり、さらに上昇すれば利益が膨らみます。一方、思惑が外れて原資産価格が損益分岐点の1万0500円を下回ると損失が発生します。しかし、オプションは権利の売買なので、原資産価格が1万円を下回り、損失が500円を超えるようであれば権利を放棄します。権利放棄により原資産価格がいくら下がろうとも、損失はプレミアムの500円に限定されることになります。
もしも、この取引を満期日まで持ち越した場合は、特別清算指数(SQ、最終清算数値)で自動決済が行われます。満期日に最終清算数値、つまりSQの値が1万1000円だった場合、1万1000円の原資産を1万円で買える権利を行使することで、決済売値1万1000円-権利行使買値1万円-プレミアム500円=500円の利益になります。一方で満期日にSQの値が9000円だった場合は、権利を放棄することで、損失はプレミアムの500円に限定されます。
オプション取引には、先に示した①コール・オプションの買いに加え、②コール・オプションの売り、③プット・オプションの買い、④プット・オプションの売り、といった4つの取引方法があります。
オプション区分 | 損益分岐点 | 利益 | 損失 | 売買のタイミング | |
---|---|---|---|---|---|
コール | 買い | 権利行使価格+プレミアム (オプション料) |
原資産価格の上昇 | プレミアム (オプション料) |
原資産価格が上がると予想 |
売り | 権利行使価格+プレミアム (オプション料) |
プレミアム (オプション料) |
原資産価格の上昇 | 原資産価格が下がる もしくは横ばいと予想 |
|
プット | 買い | 権利行使価格-プレミアム (オプション料) |
原資産価格の下落 | プレミアム (オプション料) |
原資産価格が下がると予想 |
売り | 権利行使価格-プレミアム (オプション料) |
プレミアム (オプション料) |
原資産価格の下落 | 原資産価格が上がる もしくは横ばいと予想 |
コール・オプションの買いは、プレミアムを売り手に支払い「原資産を権利行使価格で買う権利」を買います。原資産価格が権利行使価格を上回れば、権利を行使する、あるいは転売して利益を得ることができます。原資産価格が権利行使価格を下回る場合、権利を放棄する、あるいは転売して損失を確定することになりますが、損失はプレミアムの範囲内に限定されます。上で説明した通りです。
コール・オプションの売りは、今後に原資産価格が一定以上に上昇しない(下落か横ばい)と予想するときに使います。買い手からプレミアムを受け取り「原資産を権利行使価格で買う権利」を売ります。原資産価格が権利行使価格を下回っているときに買い手が権利放棄する、もしくは買い戻して利益を得ることができますが、利益はプレミアムの範囲内に限定されます。
また、原資産価格が権利行使価格を上回っているときに権利行使される、もしくは買い戻すと損失が確定します。その際には、損失が青天井に膨らむ可能性がありますので注意が必要です。
プット・オプションの買いは、今後に原資産価格が下落すると予想するときに使います。プレミアムを売り手に支払い「資産を権利行使価格で売る権利」を買います。原資産価格が権利行使価格を上回れば、権利を放棄して、あるいは転売して損失を確定することになりますが、損失はプレミアムの範囲内に限定されます。また、原資産価格が権利行使価格を下回る場合、権利を行使する、あるいは転売して利益を得ることができます。
プット・オプションの売りは、今後に原資産価格が一定以上に下落しない(上昇か横ばい)と予想するときに使います。買い手よりプレミアムを受け取り「原資産を権利行使価格で売る権利」を売ります。原資産価格が権利行使価格を上回っているときに買い手の権利放棄となる、もしくは買い戻して利益を得ることができますが、利益はプレミアムの範囲内に限定されます。
また、原資産価格が権利行使価格を下回っているときに権利行使される、もしくは買い戻すと損失が確定します。その際には、損失が青天井に膨らむ可能性がありますので注意が必要です。
このようにオプションの買い手は、原資産価格が予想通りに大きく上昇または下落した場合、短期間で大きな利益を得ることができますが、原資産価格が予想に反して逆の方向に動いても損失は限定されます。一方で売り手は、買い手から「プレミアム」を受け取るため、原資産価格が変動しなくても利益を得ることができます。しかし、原資産価格が予想に反して逆の方向に動いた場合に損失が無限大になるリスクがあります。
プレミアムと呼ばれるオプション料は、「本質的価値」と「時間的価値」によって構成されています。そして「本質的価値」は、「原資産価格」と「権利行使価格」で決まります。コール・オプションの場合は「原資産価格」から「権利行使価格」を引いた額、プットの場合は「権利行使価格」から「原資産価格」を引いた額が「本質的価値」になります。
例えば、「A」という原資産があり、現在の価格は1万円であるとします。権利行使価格が9000円の場合、コール・オプションでは差額の+1000円(=原資産価格1万円-権利行使価格9000円)が、プット・オプションでは差額の-1000円(=権利行使価格9000円-原資産価格1万円)が「本質的価値」になります。
「時間的価値」は、オプションの満期までの期間と原資産のボラティリティ(価格変動率)により決定されます。コール、プットともに本質的価値がゼロの状態でも、満期日までの期間が長いと原資産価格が大きく変動する可能性が高まります。そのため、満期日までの期間が長ければ長いほど「時間的価値」が高く、満期日が近づくにつれて「時間的価値」は下がり、最終的にはゼロになります。
また、ボラティリティが上昇するときも、「時間的価値」が上がります。 ボラティリティは価格変動が大きくなると高くなり、価格変動が小さくなると低くなります。オプション取引の世界では、過去の価格変動率から算出される「ヒストリカル・ボラティリティ(HV)」よりも、将来の価格変動率の期待値である「インプライド・ボラティリティ(IV)」がより重要視されます。「IV」が高いということは、言い換えると将来の株価変動率の期待値が大きいということになります。
仮に「原資産価格」が今後、上下どちらかに大きく変動するとした場合、オプションの買い方は損失が限定される一方で、原資産価格の上昇または下落によって「本質的価値」が大きくなる可能性が高まります。そのため、「時間的価値」が上がり、オプション価格が上昇するのです。
そのほか、影響はそれほど大きくないものの、オプション料は原資産の金利にも影響を受けます。金利が上昇する場面では資金調達して原資産を買う際、価格が同じならば今よりも将来に買う方が金利分だけ安く買えるので、コールのオプション料は上がります。しかし、原資産を売る際、価格が同じならば今よりも将来に売る方が金利分だけ安く売ることになるので、プットのオプション料は下がります。
要素 | 方向 | コール価格 | プット価格 | |
---|---|---|---|---|
本質的価値 | 原資産価格 | ↑ | ↑ | ↓ |
↓ | ↓ | ↑ | ||
権利行使価格 | ↑ | ↓ | ↑ | |
↓ | ↑ | ↓ | ||
時間的価値 | 満期までの期間 | ↑ | ↑ | ↑ |
↓ | ↓ | ↓ | ||
ボラティリティ | ↑ | ↑ | ↑ | |
↓ | ↓ | ↓ | ||
その他 | 金利 | ↑ | ↑ | ↓ |
↓ | ↓ | ↑ |
「バイナリーオプション(binary option)」とは、2011年の初め頃から取り扱うFX(外国為替証拠金取引)会社が増えてきた割と新しいオプション取引です。バイナリーとは、「0」か「1」かの二者択一を意味します。
為替レートを指標としたバイナリーオプションの場合、(数時間後)の満期時の為替レートが現在よりもドル高・円安になるか、ドル安・円高になるかを予測してコール・オプション、プット・オプションのようなチケットを購入します。そして、予測通りになれば利益になるという二者択一のシンプルなものです。
サイコロの目で偶数か奇数かを当てるゲームと似たような仕組みですが、「誰でも簡単にできる」との謳い文句で個人投資家中心に人気を集めています。チケットはFX会社ごとに異なりますが、一般的には1000円未満で購入でき、予測が外れたとしても損失額はチケット購入金額のみとなります。
ただし、海外のバイナリーオプションを取り扱う業者が出金に応じないなどのトラブルも相次ぎ、国民生活センター※や金融庁が注意喚起を行っています。海外の業者は日本の金融庁の管轄ではなく、金融商品取引業の登録を受けていない無登録業者であることが多いため、FX会社を選ぶ際には注意する必要があります。安心できる取引を行えるようになるため今後の更なる法整備が待たれます。
※ 国民生活センター「無登録業者とのバイナリーオプション取引は行わないで!-SNSをきっかけにした20歳代のトラブルが目立ちます-」
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20191024_1.html
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