株価指数先物とは?(上)
配信元:みんかぶ先物 著者:MINKABU PRESS

株価指数先物とは?(上)

株価指数先物について知ろう(上)~ 初心者のためのデリバティブ取引ことはじめ

1.株価指数は市場の大きな動きを教えてくれる

株式市場について報じるニュースなどでは「日経平均株価(日経225)」や「東証株価指数(TOPIX)」といった言葉がよく使われます。日経平均株価と東証株価指数はともに、株式市場全体の動きを表すために使われる「株価指数」です。先物取引を理解するためには、その元(原指数)となるこれら株価指数についても学んでおく必要があります。

株価指数には様々なものがあり、その計算方法も異なります。しかし、共通しているのは、複数の銘柄(対象とする市場の主要銘柄もしくは全銘柄)の株価を元に計算された指数であることです

個別銘柄の株価はどれもが同じような動きをするとは限りません。ソニー <6758> が上昇しているのに、ソフトバンクグループ <9984> が下落しているといったように様々であり、個別の動きだけを見ていても、市場全体の動きを把握することはできません。そこに株価指数の役割があります。全銘柄(もしくは主要銘柄)の変動を表す株価指数を使えば、株式市場全体の動きを把握できるのです。

日経平均株価とソフトバンクグループ、ソニーの価格推移

日本を代表する株価指数には、先に触れた「日経平均株価(日経225)」と「東証株価指数(TOPIX)」があります。日経平均株価は東証1部の主要225銘柄の株価を平均したもので(正確には修正単純平均)、日本経済新聞社によって算出されています。一方、東証株価指数は、東証1部全銘柄を対象に時価総額のウエイトを加味した加重平均したもので(正確には浮動株時価総額加重平均)東京証券取引所によって算出されています。東証株価指数は時価総額を計算の基礎としている点が、日経平均株価とは大きく異なります。

国内の株価指数を元にした金融派生商品(デリバティブ)の中には、日経平均株価(日経225)を対象としている「日経225先物」「日経225mini(ミニ)」「日経225オプション」「Weeklyオプション」があります。また、東証株価指数(TOPIX)を対象としているのが、「TOPIX先物」「ミニTOPIX先物」「TOPIXオプション」です。

このほか、JPX日経インデックス400を対象とする「JPX日経インデックス400先物」と「JPX日経インデックス400オプション」、東証マザーズ指数を対象とする「東証マザーズ指数先物」、TOPIX Core30を対象とする「TOPIX Core30先物」、Russell/Nomura Prime インデックスを対象とする「RNプライム指数先物」、東証銀行業株価指数を対象とする「東証銀行業株価指数先物」や「東証銀行業株価指数オプション」などがあります。

【参考】日本取引所グループ:商品一覧
https://www.jpx.co.jp/derivatives/products/list/index.html

ポイント①
株価指数は複数の銘柄の株価(時価総額)を元に計算される
ポイント②
株価指数は株式市場全体(もしくは業種など)の動きを把握するもの

2.株価指数と先物の間には価格差がある

ここからは日経平均株価を元にした株価指数先物を解説しましょう。日経平均株価指数先物では株券の売買は行われず、日経平均株価という指数をいくらで買う(売る)という契約だけが事実として残り、その契約の期限として決済日(SQ〔特別清算指数〕算出日)が定められています。3月、6月、9月、12月の第2金曜日がその決済日となり、それぞれを3月限(ギリ)、6月限…と呼んでいます。先物を買った(売った)場合、売買最終日(SQ算出の前営業日)までに反対売買を行わないと、その限月(ゲンゲツ)の決済日の値段(SQ値)でその先物は清算されることになります(SQ値で反対売買したことになります)。

そして、買った(売った)時の価格と、反対売買を行った時の価格の差額を利益として受け取ったり、損失として支払うことになります(差金決済)。なお、先物取引で売買の中心となるのは一番決済日が近い限月であることが多く、期近物(きぢかもの)、もしくは当限(とうぎり)と呼ばれます。期近物の先の限月は期先物(きさきもの)、もしくは翌限(よくぎり)と言います。

基本的に日経平均株価(原指数)と日経平均株価指数先物は、一定の価格差をもって連動した値動きを示します。日経平均株価が上昇すれば、当然先物も同じように上昇するのです。ただし、激しく変動する株式市場において、その価格差は常に一定というわけではありません。日経平均株価指数と先物の値段を毎日比べてみて下さい。その価格差が広がったり、縮んだり、先物の方が高かったり、安かったりしていることが分かります。

先物には「理論価格」とよばれるものが存在します。金利や配当を元に計算されるもので、原指数(=日経平均株価)に対して先物がいくらであれば合理的であるか、を示す価格です。理論価格には受け渡しまでの期間の金利分が上乗せされる一方、現物で受け取れる配当金などの分は除かれます。そして理論上、原指数と先物はこの価格に基づいた価格差をもって推移することになります。

※先物理論価格=現物価格×〔1+(短期金利-配当利回り)×(決済までの日数÷365)〕

しかし、先物にしても原指数にしても市場で売買される以上、価格にはブレが生じます。このため、理論上の価格差(=理論スプレッド)に比べて、実際の価格差は広がったり縮んだりするのです。その価格差の変動に着目して(理論スプレッドに比べて)割高な方を売り、割安な方を買うという売買をほぼ同時に執行するのが、皆さんがよく耳にする「裁定取引(アービトラージ)」のひとつなのです。先物を売り、原指数を買う取引を「裁定買い」、先物を買い、原指数を売る取引を「裁定売り」といいます。

ポイント③
先物には理論価格が存在する
ポイント④
先物と元になった指数との間には価格差が生まれる

3.裁定取引の仕組み

分かりやすいように理論スプレッド(理論上の価格差)がゼロであったと仮定してみましょう。この場合、原指数と先物は同じ値段であれば理論通りということになります。しかし、実際の市場において原指数が2万円の時に、先物が2万50円であったとしましょう。つまり、先物が50円割高な状態です。この時に、先物を売り、原指数を買います。そうすれば理論スプレッドに比べて50円ほど大きな価格差で裁定ポジションを組んだことになります。

そして、そのポジションを解消する(つまり売った先物を買い戻し、買った原指数を売る)タイミングを待ちます。先物の割高感が解消されたり、反対に先物が割安となる時がくれば、裁定解消売りを行い、ポジションを解消します。これによって利益を得ることができます。もし、そういったチャンスが来なかったとしても、先物はSQ算出時に原指数との価格差が必ずゼロになります。ということは、最低でも50円分の利益は得られることになるのです。

ポイント⑤
SQの時には先物と原指数の価格差は必ずゼロになる

4.まとめ

  • (1)株価指数は主に市場全体の動きを表す数値であり、株価指数先物とはこの原指数を基にした先物取引を指します。
  • (2)株価指数先物取引には決済日(SQ日:特別清算指数算出日)が定められており、SQの時には先物と原指数の価格差は必ずゼロになります。
  • (3)先物には理論価格が存在します。株価指数と先物は基本的に理論価格に基づいて一定の価格差をもって連動しますが、その価格差にはブレが生じることがあります。

このコラムの著者

MINKABU PRESS
MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。