株価指数先物とは?(下)
配信元:みんかぶ先物 著者:MINKABU PRESS

株価指数先物とは?(下)

株価指数先物について知ろう(下)~ 初心者のためのデリバティブ取引ことはじめ

1.株価指数先物なら夜間のリスクにも対応可能

日経平均株価を対象とする株価指数先物には、海外では米国にあるシカゴ・マーカンタイル取引所に上場している「CME日経平均先物」、シンガポール取引所に上場している「SGX日経平均先物」があります。東京株式市場における通常取引時間は9:00~11:30、12:30~15:00ですが、日本の先物市場の取引時間は8:45~15:15、16:30~6:00になります。

東京株式市場、日本の先物市場、外国株式市場の取引時間

株式市場の取引時間外において発生する内外要因に対して、過去には翌日の株式市場でしか対応できませんでした。しかし、先物市場は、現物の株式市場が取引できない時間帯においてもこうしたリスクに対して瞬時に対応できる利便性を備えています。以前は海外のCME日経平均先物やSGX日経平均先物がその役割を担っていましたが、国内においても先物の取引時間の延長により、カバーできるようになってきています。

個例えば夜間に米国で発表された雇用統計などの重要指標の結果に対応できず、以前は日経225先物と海外で動いているCME日経平均先物との価格差が広がり、翌日の取引に大きく影響していました。現在では取引時間が延長されたことにより価格差は少なくなり、取引時間外での外部要因が市場に与える大きな影響は対応可能となっています。

ポイント①
先物は株式市場の取引時間外の出来事にも対応できる

2.株価指数先物の取引にはいくら必要?

日経225先物の取引単位(1枚)は日経平均株価の1000倍、日経225miniでは100倍となります。日経平均が2万円だった場合には、日経225先物の最低売買単位は2000万円です。これだけをみるとハードルは高く感じられるでしょうが、取引額に応じた証拠金を差し入れると、証券会社から資金を借り入れることができるため、少ない手元資金で先物の売買が可能となります。

証拠金についてはSPAN証拠金額を基に算出されますが、2020年5月末時点では、おおよそ100万円ほどです。つまり、、100万円で2000万円の取引を行うことができますので、20倍程度のレバレッジ効果となります

このほか、TOPIX先物の取引単位は東証株価指数(TOPIX)の1万倍、マザーズ指数先物は東証マザーズ指数の1000倍、JPX日経インデックス400先物はJPX日経インデックス400の100倍になり、それぞれSPAN証拠金額を基に算出された証拠金を差し入れすることで取引が行えます。

また、日経平均株価やTOPIXのように日本を代表する株価指数は、国内外の投資家による売買が活発で流動性があります。一方で、個人投資家が主体となる新興市場の東証マザーズ指数は激しい値動きが特徴です。東証マザーズ指数はTOPIXと同様に時価総額加重平均型の株価指数ですが、時価総額が大きい一部の銘柄の価格変動に影響を受けます。そのため、マザーズ先物は日経平均株価やTOPIXを対象とした先物と比べて、価格変動率が大きくなる傾向があることは認識しておく必要があるでしょう。

ポイント②
先物では20倍程度のレバレッジ効果を得られる
ポイント③
マザーズ先物は変動率が高い傾向にある

3.株価指数先物取引の活用法

株価指数先物の売買は、その目的によって主に(1)スペキュレーション取引、(2)ヘッジ取引、(3)アービトラージ(裁定)取引の3種類の取引に分けられます。

(1)スペキュレーション(投機的)取引
相場が上がるか下がるかを読んで売買する、最もシンプルな利益追求を目的とした取引です。相場が上がると思えば買い、下がると思えば売ります。主に証券会社による自己売買部門やヘッジファンドなど、目先で売買している投資家が行っている取引です。超短時間で売買を繰り返すスキャルピング取引もほぼ同様の取引です。

※スキャルピングとは、本来「頭の皮を剥はぐ」という意味ですが、短時間で売買を繰り返し、薄い皮を何枚も剥ぐように、相場から小さな利益を取っていく方法のことを指します。

(2)ヘッジ(損失回避)取引
銀行や生・損保などの金融機関、事業法人などはそれぞれの株式を大量に持ち合っています。また、年金や投資信託も大量の株式を保有しています。相場が急落した場合、その保有株式(ポートフォリオ)には大きな損失が発生してしまいます。しかし、保有株式を売る訳にはいかない場合も多いのです。取引関係にある企業やグループ企業の株式の売却は経営戦略上、避けたいこともあります。こうしたケースで株価の下落が予想される場合、先物を売ることによって損失回避を図るのです。このような保有しているポートフォリオの損失回避を目的とした取引をヘッジ取引といいます。

(3) アービトラージ(裁定取引) 先物と株価指数の間には一定の価格差が存在します。その価格差は理論価格に基づくものですが、実際のマーケットにおいてはこの価格差が拡大・縮小を繰り返しています。そのブレを利用して高い方を売り、安い方を買う。これが先物を使った裁定取引(アービトラージ)取引のひとつです。

ポイント④
先物の売買手法は大きく3種類に分けられる

4.まとめ

  • (1)先物では、取引金額と同額の資金が必要なく、取引額に応じた証拠金を差し入れることでコストが抑えられます。
  • (2)先物の売買は、目的によって主に「スペキュレーション取引」「ヘッジ取引」、「アービトラージ(裁定取引)」の3種類の取引に分けられます。
ワンモアLesson

「日経225先物とTOPIX先物を利用したロング・ショート戦略」

裁定取引は株価指数と先物の価格差に着目して行う取引です。これまで派生元と同じ株価指数先物を活用して利益を狙う方法を紹介してきましたが、ほぼ同じ動きをみせる異なった指数を組み合わせる取引もあります。これが日経225先物とTOPIX先物を利用したロング・ショート戦略です。

株価指数と先物を利用したアービトラージと異なり、どこかの時点で必ず価格差がゼロになる取引ではありませんので、スペキュレーション取引に近い部分はありますが、ほぼ似たような値動きをすることにより、ロング・ショート戦略が可能になります。

「NT倍率」という日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割って算出する指標があります。日経平均株価と東証株価指数は同じ東証1部の銘柄を対象にしていますが、構成銘柄と算出基準の違いにより、推移に差がみられます。例えば日経平均株価に対する寄与度の大きい銘柄として、ファーストリテイリング <9983> 、東京エレクトロン <8035> 、ソフトバンクグループ <9984> などが挙げられます。一方で、時価総額基準のTOPIXにおいては、自動車や銀行といった業種の寄与度が大きくなります。

「NT倍率」を使えば、この2つの指数の価格差を測ることができます。このロング・ショート戦略では「NT倍率」が上昇、もしくは低下した局面(つまり価格差が開いた局面)の後で価格差が元に戻ろうとする傾向に着目します。例えば「NT倍率」が上昇したときには日経225先物を売り、TOPIX先物を買うといったロング・ショート戦略が組めるのです。

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