そもそも「先物」ってなに? ~ 初心者のためのデリバティブ取引ことはじめ
先物は、「ある商品について、将来の定められた時点においてあらかじめ決められた価格で売買することを約束する契約」のことです。売買される商品としては、大豆やとうもろこしといった農産物、石油や貴金属といった資源、形のない株価指数といったものまで幅広く取引されています。この取引を「先物取引」と言います。先物取引とは、将来のある日、つまり未来のモノ(価格)を、いま取引することなのです。
例をあげて簡単に説明しましょう。日々価格が変わる「A」という商品があり、その現在の価格は1万円であるとします。この「A」を3カ月後に1万円で買うことができるように予約をするのが先物取引になります。この取引により、3カ月後に1万円で「A」を手に入れることができますが、もし、3カ月後に「A」が1万500円に値上がりしていた場合、500円を得することになります。反対に9500円に下がっていれば、500円の損になります。予約した時点では将来の価格は分かりませんが、あらかじめ決められた価格で売買を行うことができますので、上手に活用すれば将来の価格変動リスクを回避して利益を手にすることができます。
先物取引ではこのように、まだわからない将来の価格を巡って、可能な限り安く買いたいと考える投資家と、高く売ることを狙う投資家が、互いの顔も知らぬまま取引市場で駆け引きを繰り広げています。この両者の攻防により価格は決まっていくのです。
先物取引は「デリバティブ:derivative(金融派生商品)」の一つです。「デリバティブ」は先物取引やオプション取引、スワップ取引など元になる株式や債券、為替など(原資産)から派生してできた金融商品を指します。派生商品であるデリバティブは、当然のことながらそれぞれの元となっている金融商品と強い関係性があります。
デリバティブ取引の起源は古く、紀元前600年頃の古代ギリシャにおけるオリーブ搾油機を巡る逸話(哲学者ターレスはオリーブの豊作を予想し、貸し出し料の上昇が見込まれる搾油機の使用権を予約することで大きな利益を得ました)や、江戸時代の1730年代まで遡ることができる日本の米の先物取引などがよく知られています。1987年には大阪証券取引所で株式先物取引「株先50」がスタート。以後、株式や債券などの金融商品を対象とする先物取引やオプション取引、スワップ取引などデリバティブ市場は着実に成長を続けています。
先物取引では、将来値上がりしそうと思えば「買い」、値下がりしそうならば「売り」で予約をします。そして、買った(売った)ときの価格と、将来に反対売買(決済)を行ったときの価格の差額を利益として受け取ったり、損失として支払ったりするのです。当然、売った先には買った人がいて、その間に取引所が入って損をした人からお金を徴収し、儲かった人にお金を渡すことになります。つまり、市場で一方が利益を得たならば、もう一方は損をして、全体としては「プラスマイナスゼロ」になります。1人の「利益」はもう1人の「損失」であるという意味で「ゼロサムゲーム」なのです。
先物取引は「将来の特定の時点」で売買を行うことをあらかじめ約束する取引ですので、その「将来の特定の時点」として決済日が定められています。もちろん、決済日前に反対売買を行うこともできますが、期限の決済日になれば自動的に決済されます。この自動的な決済のときに使われる価格が、取引所が算出する「特別清算指数(SQ値=Special Quotation)」となります。
先物取引は、売った先には買った人がいて、その間に取引所が入って損をした人からお金を徴収し 、儲かった人にお金を渡す取引であることを解説しました。先物取引においては実物の取引は行わずに、買った価格と売った価格の差額分を受け渡しする「差金決済」が行われます。つまり、先にあげた例では、「A」という商品を1万円で買う予約をして、決済日の価格が1万500円だったとすると、1万500円のものを1万円で買えるわけで、差額分(1万500円-1万円)の500円を受け取れます。逆に、決済日の価格が9500円ですと、その差額分500円を支払って清算します。
先物取引は、将来、相場が上昇すると予想されるときには、「買い」から取引を始めることができます。予想通りに相場が上昇すれば、期日までに反対売買(転売)し差額を利益として確保することができます。
逆に、相場が下落すると予想したときには「売り」から入ることができます。「売り」からスタートして、期日までに予想通り相場が下落すれば、買い戻すことで差額を利益として得ることができます。
注意したいのは「買い」と「売り」のどちらの場合でも、相場が予想通りに動かずに反対方向に振れた場合には、差額分の損失が発生することになります。
先物取引を開始するうえで必要になるのが証拠金です。これは約束した売買をきちんと行うために差し入れる保証金となります。
株取引では、10万円の株式を買うためには、原則10万円の資金がいります(手数料などは考慮しません)。しかし、先物取引では、取引金額の全額を用意する必要はなく、一定の証拠金を差し入れることにより、これを担保にしてより大きな取引を行うことができます。
これは少ない資金で大きなリターンを狙えることから、テコの原理になぞらえてレバレッジ効果と呼ばれ、先物取引の大きな魅力となっています。
ただし、その分、相場が予想とは逆の方向に動いたときには損失も大きくなりますので注意が必要です。
なお、差し入れる証拠金額は、SPAN®(The Standard Portfolio Analysis of Risk®)をもとに各証券会社において計算された金額となります。SPANとは、シカゴ・マーカンタイル取引所(Chicago Mercantile Exchange:CME)が1988年に開発したリスクベースの証拠金計算システムで、世界の主要各国の先物・オプション取引所、清算機関で採用されています。
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