先物取引の市場参加者は、時々刻々と変動する先物取引に目を光らせて、売り買いの注文を出します。そうした注文は、現時点の相場が高いか安いか、もっといえば現時点の相場が高すぎるとみるか安すぎるとみるかで、判断することになります。
そして、こうした相場の高安の判断基準となるのが一定の前提を置いたモデル等を使って算出される理論価格です。すなわち、理論価格と比較して実際にマーケットで取引されている価格(先物の相場)が乖離している場合には、相場の歪みがいずれ解消されることを予想して売り買いを行うこととなります。
先物の理論価格は、一般的に「キャッシュ・アンド・キャリーモデル」を使って算出されます。
先物の意味するところは、将来の1時点で売買する原資産の価格を現時点で決めておく契約です。そして、このキャッシュ・アンド・キャリーモデルは、先物取引であらかじめ決めておく先物価格は、将来の1時点において実際にマーケットで売買されている相場に等しい、という前提に立って、将来の1時点におけるマーケットの相場を理論的に算出するものです。
将来の1時点におけるマーケットの相場の理論値は、現時点で原資産を購入してそれを将来の1時点まで保有するとした場合にかかる総コストから導出します。英語で先物をフューチャーズというのに対して、現物をキャッシュといいます。キャッシュ・アンド・キャリーモデルの名前は、まさしく原資産(キャッシュ)を購入して、それを将来まで保有(キャリー)した場合にかかる総コストからつけられたものです。そして、キャッシュ・アンド・キャリーモデルから算出された将来時点の相場が、すなわち先物価格の理論価格であるとします。
株価指数先物を使って、キャッシュ・アンド・キャリーモデルを具体的にみてみると、株価指数先物の原資産となる株価指数は、多数の銘柄から構成されています。したがって、その保有コストは、株価指数を構成する現物の株式群を購入するためにかかる金融費用から株式群から得られる配当を引いた差額となります。
株価指数先物の理論価格=現物価格×〔1+(短期金利-配当利回り)×(SQまでの日数÷365)〕
これを、日経平均株価2万4千円、金利(年率)0.5%、配当利回り(年率)1.0%、SQまで90日で計算すると、
24000円 × ( 1 + ( 0.005 - 0.01 ) × ( 90 ÷ 365 ) ) = 23970.4円
となり、これが期間3ヵ月の日経225先物の理論価格となります。
SQ日に近付くほど理論価格との差も近付いていきます。 なお、キャッシュ・アンド・キャリーモデルには、先物取引、現物取引とも取引にかかる委託手数料、執行手数料、ビッド・アスクスプレッド(買い注文と売り注文の価格差)等のコストは考慮に入れていないことや、資金調達、貸出に制約はないこと、また現物売り(信用取引による現物売り)に制約はない、といったいくつかの前提が置かれていることに留意する必要があります。
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