市場間アービトラージ(しじょうかんあーびとらーじ)

スプレッド取引には、取引をする2市場間、2商品間、または2限月間の価格の相対関係の変化から裁定益を得ようとする取引がありますが、2つの異なる市場で同一の商品が上場され、取引されている場合に、一方の市場の価格が他方の市場の価格より高いという一物一価が成立していない状態が発生することがあります。そこで、高い方の市場で売り付け、安い方の市場で買い付けの取引を行い、先行き価格が同一になったところで反対売買を行うか、または満期までこの裁定ポジションを持って決済をして利益を得る取引を市場間アービトラージといいます。
現在では、ITの進展によって世界のどこかでイベントが生じると、それが瞬時にしてすべてのマーケットに伝達されて、それを織り込んだ相場が形成されることから、こうした市場間アービトラージ(インターネットマーケット・アービトラージ)で裁定益が得られる機会は少なくなっています。
しかし、大きなイベントがマーケットにインプットされた場合には、市場流動性の厚い、薄いでイベントの消化速度が異なり、それによって短時間ですが、価格差が生じるケースが見られます。
たとえば、シンガポール取引所のデリバティブ部門は日経225や日本国債(JGB)、ユーロ円3カ月物金利の先物、オプションを上場していますが、流動性ではホームマーケットである大証、東証、東京金融取引所に比べて劣っています。したがって、大口注文が入った場合には、シンガポール取引所のほうがマーケットインパクトが大きく値が飛ぶといったことが生じることがあります。そうした場合には、取引所間の相場を見比べて安い方を買い、高い方を売ることで裁定ポジション(裁定取引による持ち高)を形成しておいて、その後に価格差が解消したところで逆の取引をすることによって裁定ポジションの解消を行い、裁定益を得ることができます。