トータルリターンスワップ(TRS、またはトータルレート・オブ・リターンスワップ、TRORS)は、クレジット・デフォルトスワップに次いで活発な取引が行われているクレジットデリバティブとなります。
トータルリターンスワップの仕組みを見ると、プロテクションの売り手はトータルリターンスワップの対象となる原資産が生む金利やキャピタルゲイン(キャピタルロスとなることもあります)等のすべてのリターン(ロス)を受け取ることになります。
一方、プロテクションの買い手は、プロテクションの売り手から原資産の元本にLIBORに一定のスプレッドを乗せた率を乗じて得られる金額を受け取ります。このようにトータルリターンスワップでは、参照債務のリスクと経済価値はプロテクションの売り手に移転されますが、現金によりネット決済されることから、参照債務そのものの移転は生じません。
具体例でこれをみると、いまA社はポートフォリオの中にB社の社債を大量に保有していますが、B社の業況不振から社債の格付低下と、それに伴う値下がりを懸念しています。しかし、A社とB社は緊密な取引関係にあり、A社はB社債の売却は控えたい事情にあります。そこで、A社はC銀行との間でトータルリターンスワップを締結して、プロテクションの買い手となります。これで、スワップの期間中のトータルリターン(ロス)はすべてC銀行に移転され、その代わりにA社はLIBOR+αのベースでの金利収入を得ることができます。すなわち、A社は社債を手放すことなく、B社債の信用リスクのみをC銀行に移転したことになる一方、C銀行は実際に社債を購入することなく、それと同様のリターン(ロスになることもある)が得られるといったレバレッジ効果を享受することができます。
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